内容説明
漱石の「自己本位」のこと、蘆花や遠藤周作にとってのキリスト教、川端康成における処女崇拝の刻印、小林秀雄のベルグソンから宣長に向かう軌跡…。西欧的なものの受容と格闘を通して独自の非西欧的世界を切り拓いてきた文学者の系譜を縦糸に、三島由紀夫・開高健など同時代の文学者との出会いと交友を横糸に編んだ文芸評論集。
目次
1 三島由紀夫―その死をめぐって(三島の死と川端康成;『荒野より』;『天人五衰』の主人公は贋物か;『豊饒の海』と夢の支配)
2 西欧との対決としての近代文学史(「自己本位」のこと―漱石、和辻、鴎外;徳富蘆花―『順礼紀行』をめぐって;芥川龍之介『藪の中』の謎;川端康成―その女性像を中心に;小林秀雄―「無垢」の思想家)
3 戦争と文学(私の「十二月八日」;阿川弘之『山本五十六』;戦争と人間―今日出海、里村欣三、竹山道雄;詩の栄光―浅野晃『天と海』)
4 私の青春と文学(わが文学的青春―「批評」の周辺;遠藤周作―ビエタについて;北杜夫―無垢な少年の眼;開高健―駆け抜けて行った男;立原正秋―根の回復への夢)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
風に吹かれて
4
平成6年刊。Ⅰ三島由紀夫-その死をめぐって、Ⅱ西欧との対決としての近代文学史、Ⅲ戦争と文学、Ⅳ私の青春と文学、という四部構成で昭和34年から平成4年の間の18本の評論を収める。三島由紀夫、川端康成、北杜夫などの作品批評など。著者と同時代に生きた作家たちのことを読むと、作品を読み返したいという思いが強くなる。特に印象に残ったのは三島の楯の會1周年記念式典での祝辞を川端は断ったが、そのことをとても後悔していたということ。奥野健男の大作『三島由紀夫伝説』をいつまでも飾っておかないで読まなければ、と思った次第。2015/06/22
-
- 和書
- 私の歩いてきた道