出版社内容情報
イヤなことは燃やしちまえば良いんだよ。32年前に起きた放火事件の謎を探るうち自身と向き合うことに。シリアスでゆるい待望の長篇
内容説明
三十二年前の放火殺人を探るうち、神がかった先生のご託宣や家族の秘密が炙り出され、おのれの不甲斐なさも思い知らされる。本当の事件から生まれた「炎上」小説。
著者等紹介
戌井昭人[イヌイアキト]
1971年、東京生まれ。文学座を経てパフォーマンス集団「鉄割アルバトロスケット」を旗揚げし、脚本を担当、出演もしている。2009年『まずいスープ』で作家デビュー(表題作は芥川賞候補に)、2014年「すっぽん心中」で川端康成文学賞、2016年『のろい男 俳優・亀岡拓次』で野間文芸新人賞を受賞(このシリーズの前作『俳優・亀岡拓次』は安田顕主演で映画化された)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
そら
29
淡々とした家族の日常系なんだけど、過去にあった近所の大事件の真相が明らかになる。明らかになると言っても特別調査するわけでもなく、家族や近所の人から話を聞くだけ、、。芥川賞っぽい、何が言いたいのかよく分からない、、(・・;)。でも、会話が多くて、「渡る世間は〜」のドラマみたいで、ずっと読んでいられる。実はみんな波瀾万丈だよね〜的な群像劇なのかなぁ。読みやすくて面白いけど、だから??って感じもある。気になるから次は「酔狂市街戦」も読んでみようと思う。2024/04/13
プル
29
なんと、表現していいのやら。普通の人だったら、経験しないようなことはサラッと書いて、何でもないような感じ。でも、毎日生きていくことの方が、なんだか、ずんと重く感じる。それでも、戌井ワールド、全体が、どこかが、雲の上の話のようだ。頭の中を空っぽにして読みたい作品。数年前の作品よりも、ずっと、大人な文章になった戌井さんのような気がする。でも、雰囲気そのままで、ゆるーく読める、内容は超凸凹なお話が続く、不思議な魅力を持った内容です。2021/03/02
おかむら
28
戌井さんの新作は、30年前に世田谷で起きた寺の住職による放火殺人、そこの信者だった祖母の抱える秘密とは…。なんともおどろおどろしい筋書きですが、そこは戌井さんなので、ゆるく可笑しい読み心地。認知症の祖母との会話や下高井戸の客引きとの会話が楽しくてずっーと読んでいたい気持ち。サウナと鰻食べに行きたくなります。2021/01/27
桜もち 太郎
18
住職が寺に火を放って、日本刀で妻を斬りつけた。そんないわくつきの寺で貰ったお札を成田山へ返しに行くお話。悲惨な事件が物語の行く末を不安にさせる、ということは全くなく、揺らりゆらりと話は進む。主人公で売れない脚本家である「わたし」は妻と別れ創作の情熱をなくし空回りしている。その脇を固める味のある登場人物たちは、おかしくそして悲しい。痴呆の症状が出てきた祖母もその一人だ。終盤でこの祖母が祭りで舞う。「あんまり煙突が高いので さぞやお月さん 煙たかろう さのよいよい」ってな感じの炭坑節を。→2021/03/08
そうたそ
17
★★★☆☆ 僧侶が伴侶を斬りつけ火を放ったという三十二年前の事件。その事件を調べる中で、家族の秘密や己の不甲斐なさを思い知ることになる――。シリアスではあるが、著者ならではの飄々とした文体も健在で、劇的な過去の事件に比べると至って平坦なように思えるストーリーも、どこかずっと読んでいたくなるような心地良さがあった。2021/03/09