出版社内容情報
美貌ゆえに、変質者に性器を切り取られた少年は、周囲に様々な欲望を惹き起こしながら成長していく――。朝日新聞連載の問題作刊行！
あまりの美貌故に性器を切り取られた少年は、みなの煩悩の救い主となるのか？ 一九七三年、五歳の葉月貴夫は性器を切り取られた。しかし尚も美しく健やかに成長した彼は、周囲の人びとのさまざまな欲望を惹き起こしていく――。古今の日本語の贅を縦横に駆使し、小説言語の枠を大幅に広げながら、文学史上最も美しい主人公の数奇な人生を追う。朝日新聞連載中から騒然たる話題を振りまいた問題作刊行。
内容説明
１９７３年、葉月貴夫は５歳にして性器を切り取られた。しかしなお美しく健やかに成長した貴夫は、周囲の人びとのさまざまな欲望を惹き起こしていく―。彼は、果たして我らの煩悩を救済し給うのか？巨匠筒井康隆が、古今のありとある日本語の贅と、頽廃的なまでの小説的技術の粋を尽して、現代を語り、未来を断固予言する、数奇極まる“聖人伝”。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
YM
98
主人公、貴夫は5歳の時に、あまりの美貌ゆえ、事件に巻き込まれ性器を切り取られてしまう。その後、貴夫は性器がないこと以外、容姿、頭脳など、ほぼ完璧に育つ。貴夫の存在によって、それ以外の人たちがいかにリビドーに引っ張られているかが浮き彫りになっていく。本書のおもしろさは、このプロットをベースに家族、友達、会社といった人間関係を巧みに描いているところ。色んな要素を詰め込みまくって、広げまくっているのに、見事なラスト。フィクションの良さをフル活用した素晴らしい作品だった。2015/01/21
nyanco
73
あまりの美しさから変質者に性器を切り取られた5歳の少年。御大は何を書かれたのかしら…と、久しぶりの作品を手に取りました。この設定でよく朝日新聞に連載を始められたものだと思いました。序盤はセンセーショナルな事件から始まり、少年時代は彼と彼の家族が、この秘密をひた隠しにする様子が綴られています。しかし、思っていたような猟奇的な事件の被害者の話というより、青年期以降の彼は、性欲を持たない自分だからこそ出来ることを見出し、欲望に乱されることのない事業展開をしていく。続→2013/06/29
くろすけ
43
久しぶりに筒井康隆のエログロワールドを楽しまんと購入したところ、意外や愛と美に満ちた典雅な物語でした。 美貌に惹かれて主人公を取り巻く人々は、所有欲に取り付かれた一人を除いてみな幸福になってゆきます。 この「幸福」の形は、精神的側面に重点が置かれていて、お互いへの愛情と思いやり、そして豊かな文化に皆満ち足りて生きています。これからの人類が進むべき道について、筒井康隆からの一つの提案なのでしょう。文語・古語の雅びさと共に「らっぷ」「まっちょ」「ごうこん」などの当て字遊びが筒井色健在で楽しかったです。2013/06/15
ジュン
41
図書館本。筒井さん連続読み。おちんちん切られたー 誰もが認める美貌の少年：貴夫の一生は虚勢から始まった。成長とともに美貌も増し、男女から誘いを受ける日々、虚勢の事実は隠しつつ、それを補うなにか、性欲を食への探究心に変え成功の道を進む。あの美貌のまま性欲を持っていたらどうなっていただろうか。結果論ではあるが、あの事件が貴夫の人生を変えた。純文学系の難しい文体に頭を奮闘させて読んだ甲斐はありました。2017/11/26
いたろう
36
現代文なのに何故か枕詞。古語、難語の嵐。異常に改行の少ない文章。筒井康隆たるもの、普通の文章を書くわけにはいかん！という強迫観念が書かせたものでは？ 語句について、やたら脚注がついているのは「なんとなく、クリスタル」のパロディか？ 文体そのものを壮大なギャグとして考えれば面白いが、小説として面白いかどうかは別問題。こんな奇をてらった手法に頼るのではなく、ストレートに往年の筒井らしいナンセンスで毒のある小説を書いて欲しいが、もう無理なのかね？2013/08/01
