内容説明
楽しみたいから読む。作品が誕生する奇蹟感がこたえられないから書く―。“…ねばならぬ”“…すべき”が性に合わない作家の、10年ぶりのエッセイ集。言葉について、NY暮らし、谷崎のことなど61編。
目次
1 昨日・今日・明日(Hについて;生徒の操行;息子の妻の呼び方 ほか)
2 ニューヨーク通信(九年目のニューヨーク;セントラル・パークのブロンズたち;摩天楼の夕暮れ ほか)
3 小説の愉しみ(谷崎潤一郎―わが二十世紀人;大阪の小説―この三冊;『文章読本』体験 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あ げ こ
12
追求も、詮索もしない。思い馳せるけれど、決して解き明かそうとはしない。ずっと不可思議な事であるまま、思いがけぬ事であるまま。決して深入りしようとはしない。そう言った不可思議な事が、思いがけない事が、平然と起こり得る世界の深遠さをなぞるように。淡々と語り。ただ静かな驚きを、密やかな感嘆を残して行くだけ。薄明かりの中、ぼんやりとしか見えはしない。それ故に妖しい。最後まで明かされぬが故に、後を引く。河野多惠子の言葉はいつも美しい。緩みなく、隙もなく、綺麗に整っていて。河野多惠子は言葉を残して行く、といつも思う。2017/12/28