出版社内容情報
思春期から33歳になるまでの友情と成長、そして変わりゆく日々を生きる奇跡を描く、再生と救済の感動作。著者5年ぶりの長篇小説。
内容説明
思春期から33歳になるまでの男同士の友情と成長、そして変わりゆく日々を生きる奇跡。まだ光は見えない。それでも僕たちは、夜明けを求めて歩き出す。現代日本に確実に存在する貧困、虐待、過重労働―。「当事者でもない自分が、書いていいのか、作品にしていいのか」という葛藤を抱えながら、社会の一員として、作家のエゴとして、全力で書き尽くした渾身の作品。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
703
西 加奈子は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。久々の長編、著者の新境地でしょうか、厳しい底辺の社会で奮闘する若者たちの物語、表紙絵同様、読んでいて辛くなる作品でしたが、一筋の光は見えます。今年のBEST20候補です。 https://www.shinchosha.co.jp/special/yogaakeru/2021/11/12
青乃108号
648
序盤は読みやすかった。2人が高校生ぐらいまでは。それからだんだん辛くなる。どんどん辛くなる。終盤は息が詰まりそうで、冗談ではなく窒息しそうで、とにかく早くこの物語からのがれたい、その一心で、くたくたになってなんとか読み終えた。なんとも不遇な2人の人生。この2人から見ると何て俺の人生は恵まれているのだろう。この本を読んだ上で放送業界に就職を希望する若者がいたら、その人に是非会ってみたいものだ。2022/08/22
うっちー
572
さすがが直木賞作家。読ませる中に社会問題をしっかり埋め込んでいます2021/11/23
bunmei
441
心が澱むような重苦しさに、足を踏み入れたような物語。貧困、虐待、性差別、過重労働、パワハラ、そして鬱…。現代社会が抱える様々な問題を次々と突き付けてくる。自分のエネルギーまでもが吸い取られていく感覚だったが、次の展開が気になる筆致力と凄まじい熱量を感じさせるのは流石に西さん。生きる事に不器用な2人が、底辺の生活の中で、這い回り生き抜く様は、痛くて心に響く。苦しいと声を上げなければ誰にも気づかれず、社会から見放されていく現実。その中で、最後に俺の後輩が切々と語る言葉に、著者からの力強いメッセージを感じた。 2022/03/02
けいご
430
この世は平等ではない。それが故に自分ではない何者かになろうと自分を覆い隠そうとする者や、現実に抗う者、弱者を痛めつける事で自分を優位にしようとする者、様々な者がいるがそのどれもが諸行無常。家族が死のうと心身が病もうと未来なんて知る由もなく時代は無常にも過ぎゆく。そして今日も自分の意志に関係なく終わる為の一日が始まる。明ける事のない世界の中にどっぷりと浸かりながら明ける事を願う事のそれぞれに目を背け続ける事とそうでない狭間で僕達は夜明けを待っている。そんな1冊でした★2022/02/24