出版社内容情報
神生島は百五十年の時を映す不思議な鏡。明治維新から「あの日」の先までプリズムのように映し出す。畢生の大河小説、三ヵ月連続刊行
内容説明
神々しい美貌の男が神生島に帰った日、血族の歴史は、再び時を刻み始めた。島に生きた、ある一族の150年の営み。明治維新から「あの日」の先までを、17の物語が鮮やかに映し出す。
著者等紹介
貫井徳郎[ヌクイトクロウ]
1968年東京都生まれ。早稲田大学卒。93年、鮎川哲也賞最終候補となった『慟哭』でデビュー。2010年、『乱反射』で日本推理作家協会賞、『後悔と真実の色』で山本周五郎賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
268
貫井 徳郎は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。離島に棲まう明治の光源氏のような凄まじい美貌の持ち主、イチマツのDNAを受け継いだ一族の大河小説、上巻は一気読みでした。 著者の新たな代表作の予感、続いて中巻へ。 トータルの感想は、下巻読了後に。 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000317.000047877.html2021/10/02
のぶ
118
神生島という小島を舞台に、明治維新からの出来事をいくつかの話に分け綴った物語で、まだ全三巻の上巻なので、この先どうなるか分からないし、評価を下すのはまだ早いかもしれないが、本書を読む限りとても面白かった。冒頭で、イチマツという島に帰ってきて、大変なもてぶりで島の女性との間に多くの子供を残し去っていくところが発端。これが島の名家「一ノ屋」一族の物語に繋がっていく。上巻で描かれるのは、明治維新から大正まで。7つの話が島の人たちの姿を映し出す。どの話もよく書き込まれていて目が離せない。この先が楽しみ。2021/09/29
ウッディ
104
島に福をもたらすと呼ばれる一ノ屋家の美男子、松藏(イチマツ)が戻り、島の女と多くの子をなす。商才を発揮し、島に産業を興した晋松、女性の権利を主張する容子、徳川埋蔵金捜索に人生を費やす小五郎、島の男を魅了した絶世の美女の鈴子など、特異な才能を発揮したイチマツの子孫たちの壮大な物語。600頁を超える大作でありながら、読者を飽きさせないストーリー展開はさすがでした。島という狭い世界ゆえに、縮図として描かれる近代日本の変化、どんな登場人物が現れるのか、島の人たちどのように変わっていくのか、まだまだ楽しめそう。2021/12/10
オーウェン
79
2015年から始まって6年越しの大河小説として完成した大作。 各章ごとに違う子供の視線となり、微妙に繋がってはいるが、それはある種の才能を与えられてこの世に産み落とされる。 また明治から大正、昭和と時代ごとに移り変わっていく。 例えば女性の権利を訴えて立ち上がったことが、どういう結果を生むのか。 また徳川埋蔵金の夢を追う男も。 才能をどこに費やすのかという選択肢も興味深い。 上巻でこれだけのボリュームなので、中巻はどうなるのだろう。2021/12/28
pohcho
74
神生島に生きる人々を描いた大河小説。時代は明治。一ノ屋の色男イチマツが島に帰ってきたところから物語は始まる。人並外れた美貌を持つイチマツに島の女達はメロメロに。多くの女性と契り多くの子をなして、イチマツは島を去り、第二部以降では彼の子孫の人生が描かれる。大らかで素朴な島の人々。大真面目で一生懸命なその生き様はどこかユーモラス。何かを成し遂げられた人もいればそうでない人もいて「人は、それぞれ自分の天命を生ききればいい」という和尚の言葉が心に響いた。最後の良太郎君の話は感動的。中巻も楽しみ。2021/11/12