内容説明
何も起こるはずはないるいつも通りだ。明日はくる。絶対にくる。平凡な日常が少しずつ失われていくことへの不安に苛まれる多感で繊細な少年少女たちを描く「虹のかかる行町」。帰ってきたはずの子どもが姿を消してしまう「飛光」など、家族と子どもをめぐる四編を収める中短編集。
著者等紹介
日和聡子[ヒワサトコ]
1974年島根県生まれ。立教大学文学部日本文学科卒。2002年、『びるま』で中原中也賞受賞。以後、詩作にくわえて、小説を発表するようになる。12年、『螺法四千年記』で野間文芸新人賞受賞。16年、『砂文』で萩原朔太郎賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Koichiro Minematsu
37
図書館本。ちょっと世界観に入り込めない自分がいた。全体的な感覚としての構図は、親と子供、子供の日常を思う親心、と言ったところか? 親の子供への深い情というものが、いつもの世界と失われていく世界との対比で1遍、1遍進んでいくうちに迫ってくる。そこで、タイトルに戻ってみると、私も子供時代、5時のチャイムというより当時はサイレンのようなもので、そのチャイムを境に楽しい遊びの世界とこれから暗い夜を迎えるので、帰宅しなくてはならないという一日の終末感という世界の狭間に子供は制約されているんだったと思い出す。2019/08/29
八百
30
虹見京太郎、正座論賞子…行町に暮らす人たちの名前はみな読み方も定かでないほどに難しい、はたしてこれは何のためだろう。例えばそれは田中一郎や佐藤正子のように他の人と被ることがなくたったひとりのたったひとつの生活を限定するためのプロテクトであるのかも知れない。なぜならそこにある日常はありふれ過ぎるくらいにありふれて誰のものだか区別のつかない日常なのだから。日和さんのチャームポイントでもある少女目線で切り取る澄み切った風景が冴える短編集、たまには濁りきった大人の目をピュアな言葉の数々で浄化してみるのもよい2019/09/30
信兵衛
27
本書で描かれるストーリィ世界、現実なのかどうか、ふと不確かに感じる、そんな境の場所に足を踏み入れた気がします。2019/05/26
小夜風
24
【所蔵】四編の中短編集。どの話もあぁ怖い、嫌だやめてっ!と目を背けたくなりました。チャイムとは学校の…ではなく、夕方5時にどの街にも流れる、子どもたちに帰宅を促す音楽のことでした。私はもう聞こえないのでとても懐かしく、そういえば今いる街ではどんな音楽が流れているのだろうと気になりました。小さい頃母方の祖母の街では音楽ではなく、お寺の鐘の音がゴーンゴーンと聞こえて、それが幼心にとても怖くてうっかりまだ外にいる時にその音が聞こえてしまったら、追われるように家に帰りました。どの子もみんな無事に帰れますように…。2019/06/16
まさ
18
日和聡子さんはやはり独特の世界観を広げる人だ。一人一人の名前とともに記されるごくごく普通の日々だけど、不穏さもあわせもつ。名前があるからなんだか特別な日常にも見えてくるし、だから綻びにも気付いてしまうのかもしれない。読後も???となるような1冊だけど、また日和さんの作品を読むのだろうな。2025/04/22
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- 和書
- 凍氷 集英社文庫