出版社内容情報
白昼の狙撃、撲殺、毒殺、そして行方不明――。政権にたてつく者には死が待ち受ける。プーチン政権とメディアの暗闘を描く戦慄のノンフィクション。
内容説明
ソ連が崩壊し、ロシアは「開かれた国」になったはずだった。だが、そこに報道の自由は事実上存在しない。大本営発表と化したニュースがあふれる中で孤軍奮闘、「不偏不党」「公正中立」を貫く新聞社がある。「ノーバヤガゼータ(新しい新聞)」。鋭い権力批判の代償として数々の記者を喪うが、屍を乗り越え、権力と対峙し続ける。彼らの目を通して「虚構の民主国家」の実態を描く。
目次
第1章 悲劇の新聞
第2章 奇妙なチェチェン人
第3章 告発の代償
第4章 殉教者たち
第5章 夢想家たちの新聞経営
第6章 犯罪専門記者の憂鬱
第7章 断末魔のテレビジャーナリズム
第8章 ベスラン学校占拠事件の地獄絵図
第9章 だれが子供たちを殺したか
著者等紹介
福田ますみ[フクダマスミ]
1956年横浜市生まれ。立教大学社会学部卒。専門誌、編集プロダクション勤務を経て、フリーに。犯罪、ロシアなどをテーマに取材、執筆活動を行なっている。2007年に『でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相』(新潮社)で第6回新潮ドキュメント賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Marcel Proust
9
ロシアによるウクライナ侵略が始まる前の2010年代に書かれた本で、ノーベル平和賞を受賞した編集長のいる「ノーヴァヤ・ガゼータ」を取材した一冊だ。この本を読み、形式的民主主義国家ロシアと戦争犯罪者プーチンの本質はチェチェン戦争の頃から変わっていないと感じた。ソ連崩壊後一時的にあった言論の自由がいかにして絞め殺され、大手メディアが政府のプロパガンダを垂れ流す堕落した装置となり、その中で唯一真実を追求するメディアがある。真実を追求する者は冷酷な報復が待ち受けている中、言論の自由とは何か、身に染みて感じた一冊だ。2023/09/30
りちゃ
6
読後、本作が読めると言うことは、実際はもっと…と、勘ぐってしまう。社会主義から資本主義へ、そう簡単に変われるものではないだろう。ただ、以前より悪くなる状況が悲しい。世代交代した後に、明るい未来があるといい。2016/10/05
ひとまろ
6
ジャーナリストが消される国ってどうなの? って思ってしまう。 そんな危険にされされての取材はどんな気持ちで行っているんだろう? なんと恐ろしい国なんだ。2013/12/19
ニゴディー
3
『でっちあげ』『モンスターマザー』が素晴らしかったのでロシアに全く興味がないながらも読んでみた。 これも良い本。 なんというか、ヒドいの一言。 テロリストとは交渉すべきではないというのはもちろんそうなのだが、こういう内容を知っちゃうと「声を上げたところで効果がないから武力(暴力)で・・・」って人が出るのも仕方がない気がしてくる。 日本はこういう国相手に「仲良く」なんてできるのか。 あくまで本書を読んだ感想。 ロシアという国や、ジャーナリズムに興味のある人であれば読むべき一冊。2017/12/13
なる
3
ロシアの新聞ノーバヤガゼータのジャーナリスト達のインタビューを通して垣間見る、ロシアの言論統制と権力が絡んだ腐敗と暴力に満ちた状況に絶句。 そして「朝、起きた時に気分がすぐれなくても、今日も『ノーバヤ』に行って仕事ができるのだと思うとわくわくして、気分の悪さなど吹っ飛んでしまう」という女性記者の言葉が現す様に、まさに命をかけて真実を伝えること、それに誇りとともに悲壮な気持でなく喜びとを持って働く人が居る事に衝撃と感銘をうけました。でも同じ事が当たり前のように起きている地域がまだ世界には沢山あるんですよね…2011/06/01