内容説明
私が幼かった頃、会社勤めをしながら、男手ひとつで子育てに奮闘する父。育ての母を迎えてからの、伸びやかな家族の情景。私の人生の転機に、控えめだがきっぱりとアドバイスを与えてくれた父。作家として、仕事に精をだす父の後ろ姿。父の入院から死に至る日々と、没後十年でさらに深い絆を感じる今日―。家族愛あふれる父の素顔を、ひとり娘がいきいきと描く。
目次
男手ひとつ 父の奮闘(二冊のアルバム;保育園の連絡帳 ほか)
父と母のいる家庭の幸せ(七五三と新しい母;下町育ちの母 ほか)
私の転機 父の一言(人並みの人間に;私の進路 ほか)
作家・藤沢周平(直木賞受賞の前後;父のスケジュール ほか)
家族の情景(東京の空っ風;三度の引越し ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こすもす
11
一人娘の展子さんが父との暮らしや想いを書いた1冊。 藤沢さんを知ったのは映画「たそがれ清兵衛」の原作者であるという事からだった。そして同郷ということからとても身近に感じたものだった。作品から感じる人への優しさはこの本からも十分に感じられた。 庄内弁が出てくると思わず「んだんだ」と頷いてしまった(笑)直木賞受賞作の「暗殺の年輪」を読んでみたいと思い、図書館に予約してある。 2016/07/06
やどかり
7
実は藤沢周平氏の本は読んだことがないのです。。でも作家の日常に興味を持ち読んでみたら、娘への愛情の深さがわかる1冊だった。展子さんを育てた奥様の愛情の深さも感じる。「普通が一番」「いつも謙虚に」など娘に伝えた言葉は私の心にも残った。藤沢作品を読んでみようと思う。2013/02/16
ERNESTO
4
藤沢作品、ヘビーリーダーではないが、同じ人物を描くのでも司馬式上から目線でなく、市民目線から作品を描く視線に好感をもっている。 私自身も孫を持つ年代となり、娘から見た父の姿にも感情移入して、感情が高ぶった。 真面目な人柄の父と娘という家庭ドラマ風内容に、藤沢ファンが読めば、書く姿勢は1971年のものだけで不満が残るやもしれぬ点に不満が残ろうか。2016/12/23
chocoeri
3
娘、展子さんが綴る、父、藤沢周平のこと。娘を産んでからわずか8ヶ月で亡くなった生母。その後の父の、小さすぎる娘との奮闘ぶり。育ての母が来てからの賑やかで穏やかな家族の時間。娘の成長を側で見ていたいから、そんな秘めた想いで小説を書いていた父。『普通が一番』普通でいることの難しさ。平凡な暮らしを守ること。その尊さを身をもって実践した父の姿と、娘への愛情深い目差し。それは市井の人々を描いた藤沢作品に通じているんだなぁ。2016/06/29
博多のマコちん
2
藤沢さんの愛娘への生涯の温かな眼差しが、展子さんの文章からも感じられ、予想通り心がジンワリとくる読後感でした。一人一人の無名の人々の人生に思いを巡らせて人情物の時代小説を多く書いた藤沢さんの人柄が垣間見えて、「やっぱり」「やっぱり」と思うことしきり。最後のほうの藤沢さんの入院生活についての展子さんの抑えた筆致に、かえって涙が滲んでしまった。この単行本の表紙の写真、藤沢さんの娘への限りない愛情がうかがわれ、本当に心が温まります。2016/05/22
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