出版社内容情報
死ぬか生きるかの瀬戸際に、なぜあんなヤツの顔が浮かんでくるんだろう……。人の心のあやうい情景を描き出す表題作他、胸の奥底に響く五つの短篇集。
内容説明
病再発の不安を消そうと出た旅先で、体の異変に襲われた道子。その瞬間脳裏に現われたのは、あれほど嫌っていた青年の姿だった―。エリートビジネスマンへの道をまっしぐらに進み、周囲の誰からも煙たがられた友人との心の絆を描き、芥川賞候補作となった表題作。下町の、古本屋を兼ねた居酒屋で繰り広げられる人情ドラマ「大踏切書店のこと」。いじめにあう幼な子と、犬との心の交流を描いた「クリ」など五篇を収録。著者初の小説集。
著者等紹介
石田千[イシダセン]
昭和43年福島県生まれ東京育ち。國學院大學文学部文学科卒業。「大踏切書店のこと」で、平成13年第1回古本小説大賞を受賞。平成23年「あめりかむら」が第145回芥川賞候補作となる。同作を収録した『あめりかむら』が初めての小説集(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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chimako
97
前の感想を読んで、なぜこれをつまらないと思ったんだろうと首をかしげる。とても良かった。ほんの少し、たった2、3年の事なのに全く読後感が違うことに自分でも驚いた。自分の気持ちもあてにならない。ましてや人の気持ちなど分からなくて当然だ。短編集(表題作は中編か?)に登場する人たちはすごく元気が良い訳ではない。病気を抱えていたり、辛い思い出があったり、年を取っていたりする。けれど生きている。生きていく。一番好きだったのはやはり「大踏切書店のこと」。おばあさんたちが良い。こういう付き合いをしたい。少しね、泣けた。2020/06/22
nico🐬波待ち中
90
病気の再発…またふりだしに戻るのか。主人公の心の悲鳴が私の心を抉る。若くして死と隣り合わせに生きる主人公のひりひりした思い、突きつけられた現実はとても他人事には思えない。そんな主人公が、辛い現実から逃げるようにして辿り着いた先で出逢った大阪のおっちゃんの、あっけらかんとした明るさに救われた。おっちゃんの生々しさは「生きる」力をくれる。ラストの『大踏切書店のこと』も良かった。小さな飲み屋にひっそりと置かれた本棚「古書大踏切書店」に夜な夜な集まる近所のお婆ちゃん達。熱燗と冷やっこと古本。こういう余生もいいな。2018/02/17
chimako
84
いかにも芥川賞候補の雰囲気溢れる一冊だった。前日読んだ『きなりの雲』は楽しめたのだが、肌が合わない感じがした。その中で「大踏切書店」は味わい深くて好きな短編。一杯飲み屋に集うおばあさん、おでんやに集うおじいさん。大踏切書店のアイウエオ順に並んだ本。目に見えるようなリアルさと浮遊感のある作風。さて、次はどんなだろう。期待は大。2018/02/26
巨峰
74
初読作家さん。ある種癖のある文章言葉遣い。表題作の町は鶴橋から一駅ということなら上本町かな、とすると、ホテルは都ホテルで、小さな食堂やら大人の玩具屋はハイハイタウン南あたりの雑多な町あたりやろかと。んでも、バスやなくても難波にいけるんやけどなぁと。。全体的に病気の話が多かったです。しかも、わりかし命に係わる感じで、どの程度まで治癒できるのかもわからん感じで放り出されている。だからこそ、生きていることの儚さと大切さがシンシンと心に降りてくる。どの短編もなかなか読ませる。最後の「大踏切書店のこと」も良かった。2016/10/13
ぴよぴよ
44
作品を読むのが楽しみな一穂ミチさんが「読み返すたびに泣いてしまう」と激賞する本の文庫刊行の記事を読んで、どんな本なのかと興味を持つ。五つの短篇集。派手さはなく淡々と落ち着いた感じで、なんとも地味だ。その感じが、読んでいるこれまた地味な私にピッタリとくる。「あめりかむら」の主人公みっちゃんの心情に大いに共感した。どの話も静かに語りかけてくる感じが心地よいけれど、表題作以外は印象に残りにくいかも。文庫本には一穂さんの熱のこもった解説付きとある。解説も読んでみたくなった。2024/08/24
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