内容説明
宮大工・西岡常一棟梁の門を叩き、三たび追い返されながらも、ついにただひとりの内弟子となった男が、法輪寺、薬師寺などでみずからの夢を実現させていく。
目次
塔を造る宮大工になりたい
入門までの棟梁の手紙
父親の反対をふりきって
棟梁と二人だけの法輪寺
弟子入りの儀式
法輪寺の中断、薬師寺金堂の再建
法輪寺三重塔の副棟梁に
死際に見た西岡楢光の職人魂
棟梁の弟・楢二郎の名人芸
高田好胤師の一言〔ほか〕
著者等紹介
小川三夫[オガワミツオ]
1947年栃木県生れ。’66年、栃木県立氏家高等学校卒業直後に西岡常一棟梁の門を叩くが断られる。飯山の仏壇屋、日御碕神社、酒垂神社で修業をした後、’69年に西岡棟梁の内弟子となる。法輪寺三重塔、薬師寺金堂、同西塔の再建に副棟梁として活躍。’77年、鵤工舎を設立。以後、国土安穏寺、国泰寺をはじめ全国各地の寺院の修理、改築、再建、新築の設計・施工・模型製作にあたる
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感想・レビュー
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さぜん
36
法隆寺棟梁の宮大工、西岡常一氏の弟子である小川三夫氏の聞き書き。1300年守り続けた技と知恵の継承は、木と人を育て生かしてきたことだった。現代の私たちは法隆寺を見て歴史や伝統や建築美に感動するだけでなく、もっと多くの事に触れ学ばねばならない。そのためにこうした書籍が重要なのだ。木も人も個性を殺さず癖を生かす。多様性が注視される今だからこそ読まれるべき一冊。2022/01/29
ZEPPELIN
4
師匠の西岡さんの続編は、弟子の小川さん。さすが師弟だけあって、信念はほぼ同じ。弟子を育てるには、言葉で教えて学ばせるのではなく、見て学ばせる。言葉はすぐ分かった気になってしまうから、余計なことは言わず、弟子に考えさせる。そして、頭ではなく体で覚えさせる。今の教育とは正反対。また、我慢や忍耐力が足らんというのは日本人全体に当てはまる話で、こういう学校教育の外側にいる人たちの生き様から学ぶべきことは本当に多い。アホみたいな啓発本よりも遥かに身に染みる2015/03/07
にゃん吉
2
西岡氏の弟子である小川氏の聞き語り。まず研ぎだけやるよう指示したり、鉋がけをしてみせて鉋屑を渡して、あとは何も教えないといった、仕事を見て、自分で考えて、身体で仕事を覚えさせようとする仕事の教え方など、徒弟制度の精華というか、近代的な価値観と相容れないエピソードが語られます。一長一短もあるのでしょうが、徒弟制度でなければ伝えられない技術とか精神というのが、やっぱりあるのだろうなと。何にせよ、宮大工の技術、精神が、法隆寺の鬼から小川氏に、しっかり引き継がれているのが嬉しい。
りっか
2
三部作(?)の真ん中。最後の法隆寺専属の宮大工棟梁西岡常一のただ一人の内弟子の本。何の予備知識もないまま、ただ修学旅行で見たときの「法隆寺の五重塔みたいな塔を建ててみたい」という思いだけで、突然棟梁に弟子入り申し込む。練習なしのぶっつけ本番で度胸を養わせ、ゆっくりじっくりと確実に体でワザを覚えさせる、現代ではめったにない古風な徒弟制度で弟子を仕込む棟梁により、一人前になる経過などが書かれています。2002/01/13
たいよう
1
宮大工が200年、300年後を考えて建物を造る技術を継承できるように、安定した収入のある仕事になってほしいと思いました。2014/07/06