内容説明
樹齢千年の檜は、大工の技と知恵で、建物になっても千年は持ちますのや―。木を知悉する「最後の宮大工棟梁」が、職人の技術と魂について語り尽くした。
目次
宮大工という仕事
木を長く生かす
木の二つの命
礎石の大切さ
木の触り心地
飛鳥の工人に学ぶ
古い材は宝もの
千年の命の木を育てる
宮大工棟梁の自然観
道具と大工の魂〔ほか〕
著者等紹介
西岡常一[ニシオカツネカズ]
1908年奈良県生れ。法隆寺金堂、法輪寺三重塔、薬師寺金堂、同西塔など、檜の巨木を使って堂塔の復興を果たした最後の宮大工棟梁。文化財保存技術保持者、文化功労者
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感想・レビュー
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ZEPPELIN
3
木も人間も同じ。自然の中に生きる仲間である。木の話ではあっても、全てが人間にも通じるから面白い。癖があるからと矯正せずに、どう活かすのかを考える。これは人間の教育にとっても大事な要素。同じことを頭に詰め込ませておきながら、個性だ自主性だという。話が違うということに教える側はいつ気付いてくれるんだろうか。そんなアホみたいな学校教育しか知らない身からすると、徒弟制度というのは厳しそうだけれど憧れてしまう。そして、こういう職人さんが着実に減ってきているというのは本当に寂しい2015/03/04
ミツキ
0
示唆に富んだ内容。科学至上主義や現代の教育にそれとなく苦言を呈している。2010/11/15
胡瓜夫人
0
宮大工という仕事にすべてを捧げた人の誇りに満ちた言葉。「プライド」なんて薄っぺらな言葉じゃ表せない。現代は遥かな未来を夢見ることを忘れてしまっているのだろう。木のいのちにも木のこころにも碌に触れないまま大人になってしまったな。2011/05/13
りっか
0
1300年前に建てられた木造建築である法隆寺に、代々仕えてきた宮大工一族の最後の棟梁の本。祖父から教わった、昔から宮大工に伝わる口伝や先人の知恵に、現代の教育や体制の在り方への問いや答えも見え隠れしていたり奥が深い。非常にわかりやすく、歯切れのいい大和弁は読んでいて心が和む。もう一度、修学旅行の時とは違う目で寺社を見なおしてみたくなるおすすめの一冊。2002/02/19
にゃん吉
0
宮大工の仕事に一生を捧げた西岡氏が、さらりと語る言葉は、力強く、美しい。それは、きっと、長い時間をかけて宮大工の仕事を自身の血とし、肉としていく中で、自ずと醸成されたであろう、先人の技術や木への敬意、宮大工の仕事に対する誇り、信念に裏打ちされているからでしょう。そんな西岡氏の言葉は、ときとして、科学、学問、教育、合理主義といった近代的なものごとと相容れない面を見せます。それは、古臭い話と一蹴できない近代の隘路を示しているようで、何度も頁を繰る手を止めて考えさせられながら、読了しました。