内容説明
ラヴクラフトは不遇のままその生涯を閉じた。だが、彼の創造したクトゥルー神話は没後高く評価され、時代を越えて世界の読者を虜にしている―。頽廃した港町インスマスを訪れた私は、魚類を思わせる人々の容貌の恐るべき秘密を知る(表題作)。漂流船で唯一生き残った男が握りしめていた奇怪な石像とは(「クトゥルーの呼び声」)。英文学者にして小説家、南條竹則が選び抜いた、七篇の傑作小説。
著者等紹介
ラヴクラフト,H.P.[ラヴクラフト,H.P.] [Lovecraft,Howard Phillips]
1890‐1937。アメリカ・ロードアイランド州生れ。病弱で、少年期から幻想小説、怪奇小説に耽溺。30代から「ウィアード・テールズ」などのパルプ雑誌に寄稿。60篇ほどの作品を発表したが、単行本として刊行されたのは『インスマスの影』1冊のみ。不遇のまま生涯を閉じる。友人オーガスト・ダーレスらの尽力もあり、死後にその独自の作風が高く評価される。“クトゥルー神話”の始祖として、多くの作家に影響を与え、世界中の読者に敬愛されている
南條竹則[ナンジョウタケノリ]
1958年、東京生れ。東京大学大学院英語英文学修士課程修了。’93年、『酒仙』で日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞。英文学者として翻訳・大学教育に携わりつつ、作家として小説を発表している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
158
今までは創元推理文庫の全集やアンソロジーでしか読めなかったラヴクラフトの主なものを集めてくれたもので楽しめました。創元社版のはいいのですが字が細かくなって老人にはしんどくなっています。南條さんが編訳されているのも読みやすさを増してくれています。代表作7編が収められています。読んでいると魚の生臭さのような感じが立ち上ってきます。2019/08/15
absinthe
106
ユークリッド幾何学を無視した冒涜的で名状しがたい感想。ラヴクラフトは修飾語が独特で、訳者を代えても隠し切れない個性がある。短編集だがどれも好きな作品。『異次元の色彩』世界がだんだん灰色になっていく。ウィアードテイルズ系を読むと、影響受けた作家により類似作が雨後の筍出てくることになるのだが。『ダンウィッチの怪』『クトウゥルー』『ニャルラトホテップ』など、この後の二次創作の源流となる有名作品。この作家を知りたいなら入門書に最適な選択。『インスマスの影』は最も有名かもしれない。2024/08/24
HANA
91
著者の諸作の中から、クトゥルー神話に関連した作品を集めた一冊。当然全て既読なのであるが、読む度に新しい魅力が発見できるなあ。内容的には「ダンウィッチの怪」「クトゥルーの呼び声」「インスマスの影」とラヴクラフトを代表するような三篇が収録されているだけで読む価値十分と言わざるを得ない。今回読み返して思ったのは著者の作品、会話があまりなくほぼ地の文ばかりなのね。その為読み進めるには時間かかるが、雰囲気に浸りたい時はそれが得も言われぬ読み心地を与えてくれる。旧支配者や魔導書の名前に触れれて懐かしかったですし。2022/08/17
コットン
91
表紙のコラージュを見て何となく衝動買いしてしまった。ラヴクラフトの今回の新訳は分かりやすく、初めて読むのには良いかもしれない。中でも『異次元の色彩』が色彩の魔力とSF的なものが上手く融合している。『インスマスの影』については二回目だったからか全集よりもすらすら読めた分、面白さは全集を上回ることはなかった。2020/05/08
sin
80
あからさまな恐怖の押し売りモダンホラーとは対称的に、肯定と否定…紛らわしい仄めかしによるもどかしさは否めないものの恐怖の根源に至る想像を掻き立てようとする作品の各々にコズミックホラーに対する真摯な想いが詰まっている。その残念とも云える辿々しい表現方法は当時の社会風土に於いて無理からぬものがあっただろうが、作者がもし現代に在ったならこの多様な読者層にあわせてもっとクレバーな表現を取ることが出来たで在ろうことは想像に難くない。むしろ作者が気に病むSAN値を蝕む怪物など現代人にとってSNSの絶好の餌食だから…。2019/08/19
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