内容説明
どうして自分は、こんなにも美しい世界を知らずにいたのだろう―。ふとしたきっかけで生命の愛しさに目覚めたハヤブサのカラは「もう二度と殺しはしない」と心に誓う。それまでの行ないを悔い、罪の意識にさいなまれ、新たな生を欲して彷徨う、誇り高き魂。孤独な旅路の果て、カラが最後に見出した答えとは?カラの生涯を通して自分を変えるための生き方を問う、大人の絵本。
著者等紹介
ガーゾーン,J.F.[ガーゾーン,J.F.][Girzone,Joseph F.]
1981年に健康上の理由でカトリック司祭を退いた後、文筆活動に入る。ニューヨーク在住
沢木耕太郎[サワキコウタロウ]
1947年東京生れ。作家。’79年『テロルの決算』で大宅壮一ノンフィクション賞、’82年には『一瞬の夏』で新田次郎文学賞を受賞
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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- 評価
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
334
著者のガーゾーンは、元カトリックの司祭。ただし、本書の世界観はむしろ汎神論的なものに見えるし、太陽崇拝など異教的な要素もそこには垣間見える。また、孤独なハヤブサの姿は修行僧(それもやはりカトリックのというよりは仏教の)を思わせる。肉食の宿命を負ったハヤブサが、そこから脱却しようと懸命にもがく姿は、滑稽でこそないが、やはり一種の"哀れ"を表象するし、それは孤高であることの代償ででもあるかのごとくだ。そして、物語の終幕は「武士道とは死ぬことと見つけたり」と達観した『葉隠』を想起させたりもするのである。2017/02/10
やすらぎ
175
ハヤブサは常に孤独だ。カラは初めて空を見上げた。こんなに高く青かったのか。獲物を目の前にして奇妙な哀れみを抱くようになってしまった。何かが変わった。気づいてしまったのだ。このままでは生きていけない。金色の太陽に目を覚ました。夢のような一日の始まりだった。本能はどこかへ消えてしまった。あらゆる音が聞こえてくる。自然はこんなに美しかったのか。冬の静寂に喜びを感じていた。この感情は何だ。なぜこんなに包み込まれるのか。熱い。なぜか熱い。太陽はこんなにも眩しかったのか。誰もが恐れない愛と友情が生まれた深い森の物語。2023/02/05
新地学@児童書病発動中
112
孤独なハヤブサのカラが、ある日自分の生き方に疑問を覚える。生きるために他の生き物を殺すことに、罪の意識を持つようになるのだ。宮沢賢治の「よだかの星」を思い出した。ただし、この物語は、賢治の作品ほど重苦しい内容ではない。救いが用意されている。それでも人生の真の意味を考えさせる優れた寓話だと思う。他の生き物を傷つけないと決めたカラが、青空の美しさに気づく場面に、ひどく心を動かされた。結末まで読むとキリスト教的な物語だと気付くが、説教臭いところはなく、全ての人に開かれた内容を持っていると思う。2017/03/12
ペグ
80
(孤独)でハヤブサで(鳥)で(物語)!自分の好きなWordが題名になっていて、しかも訳者が沢木耕太郎さん!題名はかすかに物語を垣間見せるけれど、やはり一個の手引きに過ぎず、じっと読み手を待っている。この本は何年、わたしの本棚で待っていてくれたのだろう。本は寡黙で、開いて読み始めた瞬間に語り出す。話は主人公カラの心模様と行く末だ。余韻を残し読む者に結論を託す。挿絵も美しくきっと何度も読みたくなる一冊。2018/12/28
サンダーバード@読メ野鳥の会・怪鳥
77
タイトルと訳者が沢木耕太郎さんというので手にした作品。孤独で誇り高きハヤブサのカラ。ふとした出来事がきっかけで彼は心に誓う。「もう二度と生き物を殺すことはしない。例え生きるためであっても」孤独なハヤブサのもとに次第に仲間が集まっていく。これは大人に向けたファンタジーだ。自分の生き方を変えることの喜びと苦しみ。得るものと無くしていくもの。自分にとって変えていかなくてはならないもの、変えてはいけないものは何だろうか?★★★+2016/08/28
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