内容説明
ドイツ降伏をめざしていっそう激化する戦線を目の当たりにし、戦争そのものへの疑問と言い知れぬ虚無感に囚われた、米国人従軍カメラマンのチャールズ、ソ連軍兵士イーリャ、ベルリン・フィル在籍の女性チェリスト、ロティー。異なる祖国を持つ彼らを、否応もなく過酷な運命が待ち受けていた。「ベルリン陥落」の戦史に秘められた悲劇を綴る本格派戦争小説、ついにクライマックスへ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
367
1945年3月16日から終戦直後の5月7日までを描く。下巻では政治と戦争の現実がより切実に描かれる。ヤルタ3巨頭の中で最も政治的な存在として描かれているのはチャーチル。スターリンもまた別の意味ではそうだ。2人の違いはチャーチルは最前線に出向いて行くが、スターリンはクレムリンに居座り続けること。当時のベルリンには軍人以外は壮年の男たちはほとんど存在せず、いわば女たちの街であった。彼女たちは連日連夜の空襲に耐え、ソ連軍のベルリン侵攻に脅えていた。(ロティーたちはゲシュタポをも恐れなければならなかったが)が。⇒2020/12/27
NAO
70
ベルリンに一番乗りすることの意義を知るソ連とイギリスの一番乗り争い。だが、その意義に気付かなかったアメリカ軍のアイゼンハワーが連合軍の総司令官であったとは、なんという不運。ソ連の兵士、アメリカの従軍カメラマン、ベルリンに住む女性、登場人物の誰もが虚無感に陥る戦争の悲惨さ。だが、最初は出世欲の塊のようだったイリヤが実はちゃんと人間らしさを残していたことに少し救われ、ベルリンのラストのシーンの優しさが心に沁みた。 2020/11/26
スー
20
62スターリンが夢でドイツの捕虜となり死んだスターリンの息子と対面する衝撃的な始まりでしたが戦場記者のバンディーと音楽家ロティーとソ連軍懲罰部隊のイーリャは戦場や空爆される都市の悲惨さを伝えスターリンやチャーチルやローズヴェルトやアイゼンハワー達からは戦後の世界の為の綱引きや戦略と政治の部分が伝わりとても勉強になった。戦争の現場に居る3人にはなんとか生き残ってほしいと願いながら読んでました、特にロティーにはベルリン脱出のチャンスがあったのに残る選択をした為に戦争が終わってから始まる女の戦いは辛い、2023/09/24
ののまる
11
第二次世界大戦後半の戦況地図を拡げながら読んだ。この本に出会ってよかった。戦争とは、政治とは、人びとの命とは、生き残るという意味は、生きるということは。人間の愚かさと尊さ。スターリングラード戦の『鼠たちの戦争』も読みたい。2021/02/07
コージ
2
まるで歴史の教科書か新聞を読んでいるみたいな感じだった。2023/03/08