内容説明
ノスタルジアと残酷、無邪気な童心と突如訪れる狂気―宇宙時代の散文詩人レイ・ブラッドベリの初期作品群から傑作のみを精選。妻への不信と愛への渇望に引き裂かれた男の惨劇「10月ゲーム」。何でも所有者の望む役割を果たす不可思議な装置「ドゥーダッド」。小惑星に不時着した男にしのび寄る不条理な恐怖「夢魔」。甘美で、そして冷たい詩情漂う10の佳編を収めた純文学風SF短編集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
拓也 ◆mOrYeBoQbw
31
短篇集。久々に『火星年代記』を読んだので更に再読。元々ある短編集ではなく、ブラッドベリの初期作品から『火星年代記』『華氏451度』頃までの短篇を集めた作品集になります。『火星~』のプロトタイプと思われるSF短篇も多いですが、それ以上に初期作品がモダンホラーや奇妙な味の短篇が多く、シャーリィ・ジャクソンやサキの様な恐怖短篇も多く書いてたと言う、ロマン派SFと評されたブラッドベリの意外な一面も見えて、なかなか楽しめる作品だと思いますね(・ω・)ノシ2017/03/03
TSUBASA
29
ブラッドベリの初期から円熟期にかけての10年間に書かれた短編。解説で書かれていたが、彼は「ノスタルジアと童心の作家」「宇宙時代の散文詩人」と評されるとの事で、それに思い当たる作品は読んできたが、「ポーの衣鉢を継ぐ幻想文学の巨匠」というのは初めて聞いた。そして本短編集ではこの評のような残酷さを持った作品が多かったように思う。あからさまにグロい場面を描くのではなく、想像する薄ら寒さが魅力的。良かったのは何かはわからないが望んだ機能を持つ機械『ドゥーダッド』、楽しいハロウィンを惨劇に変えた父親『十月のゲーム』。2018/06/01
501
17
初期作品を集めた10編の短編集。詩的な美と狂気が織りなす。ひりひりとする焦燥感と美しい文章への酩酊感が味わえる、著者の世界が色濃くでている作品集。2016/10/08
ニミッツクラス
12
87年の320円の新潮文庫初版(同時に単行本の大和版も読んだ)。カバーは萩尾チックな東氏の作。本書は大和版の文庫化で、訳者と解説は伊藤氏。大和版の初版は74年で、その時点では本邦短編集に収録されていない垂涎の10編となる。表題作はないものの「十月のゲーム」と「永遠と地球」に十月の文言と心象がある(挿絵が欲しい)。大和版の11刷(86年)のあとに新潮が本書を刊行したわけで、新潮は「二人がここにいる不思議」など、唐突に良いものを出版する。ちなみに早川16年の文庫版はNVではなくSFレーベルで刊行。★★★★☆☆2018/12/22
tama
11
自本 本箱発掘で 74年初版の大和書房ハードカバー 学校卒業して就職した年なのでひょっとしたら堺で買ったかも。ブラッドベリはその前から好きだったので。ただ、ちょっと黄昏の国ともタンポポのお酒とも何かが道をともニュアンス違う。それゆえそんなに再読していなかったと思う。収録10篇中7編までが私の生まれる前の作品。一番しんどかったのは「すると岩が叫んだ」。ほぼ「絶望のサスペンス」。「消えることのない人種間抗争」というテーマはひょっとすると「サスペンス感を生むための」食材なのかも?2016/05/13
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