内容説明
知らずに実の父を殺し、生母を妻とし、ついには自ら両眼をえぐり放浪の旅に出る―テバイの王オイディプスの悲惨な運命「オイディプス王」。国禁を犯して反逆者である兄の葬礼を行ったために石牢に幽閉された、オイディプスの娘アンティゴネの愛と誇り「アンティゴネ」。アイスキュロス、エウリピデスとともにギリシア三大悲劇詩人と称されるソポクレスの代表作2編を収める。
著者等紹介
ソポクレス[ソポクレス] [Sophokles]
496頃‐406B.C.古代ギリシア三大悲劇詩人の一人。アテナイ近郊の騎士階級の家に生れ、恵まれた幼少年期を過ごす。容姿端麗で役者を志したが、声が弱く断念。劇作家に転じ、27歳で競演に初参加、優勝して以来、90歳まで執筆を続けた。123篇のうち7作が残っている
福田恆存[フクダツネアリ]
1912‐1994。東京生れ。東大英文科卒。評論・翻訳・劇作・演出の各分野で精力的に活躍。芸術院会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
- 評価
本屋のカガヤの本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
里愛乍
47
オイディプス王といえば、ざっくりといえば悲劇の王としてあまりにも有名。にも拘わらず、オイディプスとクレオンとのやりとりは面白く、イオカステの言葉から導き出されていく真実への流れは読むのを止めることができません。アンティゴネは初読ですがオイディプス王の背景を踏まえ、これまた非常に読ませるものがありました。ハイモンはほんとよく出来た息子さんだと思います。こちらもあまりにも悲劇。2017/04/19
モリー
42
「地の上に住まい、脚は二つ、四つ、三つと変化はすれど、ただ声は変わることなく、(中略)、その脚の最も多きに頼りて歩む時、そは遅々として進まず、全く力なきが如し。」スフィンクスに掛けられたこの謎を解けない者は片端から殺される。その禍からテバイの人々を救った聡明な人物こそ、この謎を解き明かしたオイディプスである。この謎の答えは「人」である。似たような問題をなぞなぞの一つとして知っている人も多いかもしれない。私もその一人であるが、オイディプス王の中にその元があることを初めて知った。読みつがれていることに納得。2025/06/08
chanvesa
41
両作品においてテイレシアスの存在は、権力者と対峙し予言する。威厳とある種の不気味さを湛えている。オイディプスの出生にまつわる苦悩と運命は、自らを盲目とする激烈な結果となるが、テイレシアスやテバイの羊飼いによって存在の皮むきをされる。その冷徹さと残酷さ。アンティゴネの信念は、少し話が異なるが「エレクトラ」のクリソテミスのように政治より自分の信念を選んだ。クレオンを破壊したのもテイレシアス。テイレシアスを通した運命なのだが、彼のシニカルな面持ちがそうさせたのだと思わせる説得力があるような気がする。2016/12/30
fseigojp
26
コロノスのオイディプスと合わせて三部作と呼ばれる アンティゴネは、ブレヒトが反ナチス劇に仕立てていたが 正義のもろさ、死者への敬意など素直に読めばいいと納得 福田恒存は偉い!2016/04/11
松本直哉
25
この二つを続けて読んでいまさらながら気づくのはアンチゴネにおけるクレオンとオイディプス王の相似。オイディプスが、自ら宣言した法、ライオスの下手人は国外追放すべしという掟に、はからずも自らが縛られていったのと同様に、クレオンもまた、ポリュネイケスの亡骸は葬るべからずという布告のために自ら墓穴を掘り、腐敗した肉を食った鳥や獣がテーバイの街を穢し、最後には自らの妻も子も失う羽目になる。法を盾に自信満々だった統治者が、他ならぬその法に裏切られて見る影もなく没落してゆく。人間の作った掟の限界と浅はかさについて考える2024/07/26