内容説明
口ひげの小男トム、十五歳の少女アリスが仲間に加わった。クレイは彼らとともに最愛の息子の無事を祈りながら「我が家」のあるメイン州を目指す。だがその一方で携帯狂人は群れを形成するようになり、振る舞いも進化していく。そして、リーダーらしき人物の登場…。絶望的なまでに人無き荒野をゆく三人の旅のゆくえと、彼らを襲う悲劇とは。人類の未来をも問う、心揺さぶる結末。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tetchy
112
携帯電話の電波が人々を狂気に走らせるというアイデアは恐らくこの便利なツールがこれまでにない速さで人々に普及し、誰も彼もがいつもどこかで携帯電話を使っている状況と、当時騒がれていた携帯電話の電磁波が人間に悪影響を及ぼすという説から想起したのではと思われる。もっと勘繰れば、携帯電話の普及で本を読まなくなることを作者が憂慮して本書を書いたのかもしれない。実際本書以降に発売されたスマートフォンの普及が広がるにつれ、ますます読書離れが進み、多数の書店が倒産している現状を考えるとこの考えも穿ち過ぎだとは思えない。2024/03/31
白のヒメ
57
あまりにも多勢に無勢。絶望的な状況の中、どうやって登場人物達は困難を切り抜けていくのか。再読にもかかわらず、物語に引きこまれ、まるで自分も彼らの一員になって、携帯によって人間が変身したゾンビだらけの町を彷徨っているかのようだった。キングの作品はシャインニングなど少年が出てくるものがあるけれど、この物語も12歳の少年の素晴らしい活躍が描かれていて、それが物語に深みを与えている。下巻は息もつかせぬ一気読み。希望を抱けるラストに、力んで読み進めていた全身の力が抜けてほっと息が漏れた。2018/01/06
眠る山猫屋
51
再読。あれれ、キングにしては、原作の方が小気味良い終わり方だぞ。それでもアリスを喪うシーンでは、泣かされてしまいました。ゆっくりゆっくり死に近づいていくアリスの迷妄とした姿が、読み手まで切迫します。ラスト、映画では(配信版ですが)バッドからハッピーエンドまで複数のエンディングを展示し、観客の選択に任せるような演出でしたが、原作はちょっと御都合主義なくらい希望を抱かせて終わります。そう映画『ミスト』原作の『霧』でも微かな希望に向かう終幕でしたよね!きっとクレイはジョニーを取り戻せたはず。2017/10/16
カムイ
43
キングは世紀末的なものを書くと仲間を集める【ザ・スタンド】は典型的なストーリー今回の【セル】はライトな仕上がり、最後まで謎は謎なのだが、キングにしては尻窄みは勿体ない。2020/09/20
ぱんぺろ
36
ラストが秀逸。下巻もあいかわらず吐き気とともに、ちょっと倫理的にどーなんだ、と疑問を感じることしばしば。でも、たまにはいいね。こまけーことに目くじらたてちゃダメ。キングらしい虚構の風がふきわたる壮絶な展開。どーなるんだろ。こーなるんかな。あーなるんかな。うわぁ〜、終わったぁ〜、、、なんともいえない余韻。さびしい物語。光を願わずにはいられない。しかし。それでも人は生きてゆく。時を択べるかぎり。どうしても択べないことも、ままあるとしても。次の読書も、もう一度だけキングしよう2018/11/04