内容説明
逃げた先の街でローズが見つけた不思議な絵は、異世界への入口となった。描かれているのは神殿の廃墟を見下ろす女性の姿。彼女のまとう衣服は、ローズ・マダー(赤紫色)。ローズは絵の力を借りて、妄執にとり憑かれたノーマンと対決しようとするが…。何がリアルで、何が非現実なのか?ホラーとサスペンスとファンタジーを巧みに融合させてあなたを未知の世界へと誘い込む。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
322
本作はキングの30作目の長編にあたるそうなのだが、依然として創作意欲も構想力も全く衰えることがないようだ。物語は下巻に入って、一層にスピードを上げていく。ノーマンの足音が次第に近づいてくるからである。このあたりのスリリングな展開はキングの練達の業の冴えを如実に示している。ノーマンはやがて常軌を逸し始め、そのことはまた単に精神的なものだけにとどまらず、身体にまで及んでくる。上巻では幻想の領域に踏み込むことに抵抗もあったが、ここに来るとそれはむしろ自然なこととして受け止めている。リアルと幻想とが互いに⇒ 2024/05/05
Tetchy
130
夫の虐待からの逃避と生還といったオーソドックスな物語にスーパーナチュラルな設定を盛り込んだ物語はファンタジーのように終える。キングは常々家庭内暴力、家庭の中で圧倒的な支配力を持つ夫や父親を描いてきたが、しこりの残る終わり方をしたことは作者自身にとってまだこの家庭内暴力、虐待のテーマは素直に決着を付けられない根の深いものだと云うことか。この令和の今でも社会問題である虐待。確かにその中に取り込まれた者たちには虐待をする者だけでなくされた者も人生において終わりなき代償が必要だと作者は云いたかったのかもしれない。2022/02/07
カムイ
51
作品世界は良いのに駄目なものにこの本を上げるべきなのかもしれないですかね?!ノーマンの追跡の執拗さは特質されると思うし追われるロージの悪夢の再来の演出も見事と思うしなのに何故???ファンタジーにしてしまう辺りがいけなかったのと勝手に読後感がありました。唯一、【ミザリー】に登場する、あっ違うか名が登場するポール・シェルダンにヒュードンドン🎉🎉🎉と喝采を上げていたカムイです。【ミザリー】はキングの作品のベスト3に入れたい作品です🤩🤩🤩最終的にハッピーエンドに終わる、のでいいのか?(木を忘れず)にと2021/10/16
とも
20
下巻、とうとうノーマンと対峙することに…果たして。 全体としては「IT」の紅一点ベバリーのDV話を長編に、ダークな幻想パートをくっつけたような話。 絵の世界は、雄牛や迷宮ほか神話モチーフが見られるのでミノタウロスの迷宮なのか?あまりよくわからず。 キング著作の中であまり話題にあがる作ではないが、なかなか読み応えがあり面白かった。佳作。2025/01/26
チョッピー
19
ローズとノーマンとのダイナミックなマンハントの展開から大団円へ、と予想した下巻ですが、単純なサスペンスから逸脱した予想外な展開による決着からの、少々蛇足とも思えるエピローグでのローズの言動に至るまでがキングらしい所と思えた作品でした。エピローグの処理のさせ方が同時期にリリースされた『グリーン・マイル』のエピローグの処理のさせ方と似ているようにも思えますが、善悪の対決のような安易な構図に落とさない所は作品によっては良し悪しとも思え、今作はもう少し大人しい決着の方が良かったように思えます。2016/05/14