内容説明
この世界の向こう側には、背中合せにもう一つの世界がある。そこは科学ではなく魔法の支配する世界である。ジャックの母は向う側では女王で、やはり死の床にあるが、生命を救えるのはタリスマンだけだ。ジャックはどうしてもタリスマンを手に入れようと思う。２つの世界を跳躍しながら、西海岸への辛い旅を続けるジャック。―童心を失わない大人たちへのノスタルジアの贈り物。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tetchy
117
読み進むにつれて次第にこれは2人が紡いだ新たな『指輪物語』だと云うことが解ってくる。可愛い子には旅させよ。12歳のジャックの旅はまさに彼の成長の物語である。この旅でジャックは色んな人々と出逢い、年齢以上の人生経験を積むことになる。2人のホラーの大家がタッグを組んだ本書には物語を愛し、その力を信じる2人の情熱が込められている。本書は愉しむが勝ち。それだけのアイデアが、多彩なイマジネーションが溢れている。そう、本書そのものがタリスマン―本を読む者へのお守りであり、読者を飽きさせない不思議な力を持っている。2018/11/09
タツ フカガワ
53
下巻冒頭からいきなり始まるジャックとウルフの、サンライト・ハウスという少年の保護・更生施設（じつは苦役と虐待）からの脱出劇に圧倒され、さらに死の床にいる母親を救うタリスマンとジャックが遭遇する終盤のクライマックス・シーンは、こちらの想像力が試されているかのような山田風太郎ばりの描写で、いやあ面白かった。タリスマンによって悪意と憎悪が善意と平安に塗り替えられていくところが圧巻（ちょっと映画『マトリックス』3部作を思い出しました）。文庫で1100ページ、長さを感じさせる上巻、感じさせない下巻でした。2024/10/18
ぎん
16
本作も何度か読んでいるが、続編「ブラックハウス」を読んでから読んだのははじめて。本作の方がファンタジーの王道を行く少年の冒険譚でワクワクドキドキしながら読める。 魔法学校の話よりこちらの方がよほど面白いと思うのだが。2016/07/08
ettyan えっちゃん
14
ようやく、シャックの長い旅が終わった。 と、同時に、ずっと読み終えることができずに、心に引っかかっていたタリスマンの物語を読み終えることができ、本当に良かった。 ところで、長すぎたり、人気がなかったり、読みにくいと評判の本作だが、下巻に入るとするすると、読み終えることができた。 本当に面白いので、おすすめとは言いにくい本作だが、十数年？数十年？かけて読み終えたことも、自分にとっては、なんとも嬉しく思い出に残る作品になった。ちなみに、上巻を3冊買ってることは秘密だ。 さて、ようやくブラックハウスに入れる。 2020/08/04
志田健治
14
下巻は少々回りくどかった感もあるのですが、随時感心しながら、時にはほくそ笑み、時には涙ぐみつつ、読了しました。上巻に続いてパートナーが足を引っ張りすぎるのが、しつこいくらいのコメディで逆に唸ってしまいます。これが一般のファンタジー（そんな定義おかしいですが）なら仲間は力強く心強いものです。しかし、現実の世界では奇しくも旅を共にする事になる者は、次第に信用もおけななくなるでしょうし、そもそも戦いに不向きであるはずです。そこをうまく突いて、物語を飛躍させていることがタリスマンの功績だと思います。読んで正解！2015/05/16
