出版社内容情報
ファッションデザイナーの歩が経営するブランドは地味と皮肉られ人気が無く、さらには相棒に見限られて経営困難な状況だった。歩自身も、「ファムファタル」と称され没後も語り継がれる歌姫だった祖母とは似ても似つかない容姿で、そのことから他人の美貌に辟易し、なるべく目立たぬように生きていた。そんなある日、ハーフのモデル・ジョージと出会う。自分が常に悩まされてきた外見を武器として使う彼の生き方をずるいと感じ、信用できずにいた。しかし、仕事を失ったジョージは歩の仕事を強引に手伝うようになり……。自らの弱さに目を瞑ってきた登場人物たちが一歩ずつ成長する姿を丁寧に描いた物語。
彩瀬まる［アヤセ マル］
著・文・その他
内容説明
国民的歌姫だった美しい祖母は、自分とは似ても似つかず超えられない存在。嫌というほどその現実を感じてきた歩は、他人の美貌に辟易しなるべく目立たぬように過ごしていたが、経営するファッションブランドの人気が低迷しデザイナーの相棒にも見限られ、最悪の状況に陥る。そんな折、仕事を失いかけているモデル・ジョージと出会った。歩のブランドの建て直しをジョージが強引に手伝うようになり…。本物の美しさとは、強さとは。弱さを抱えた者たちが成長する姿を丁寧に描いた物語。
著者等紹介
彩瀬まる［アヤセマル］
１９８６年生まれ。２０１０年「花に眩む」で第９回「女による女のためのＲ‐１８文学賞読者賞」を受賞しデビュー（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
283
彩瀬 まるは、新作中心に読んでいる作家です。美空ひばりのようなスーパースターを祖母に持つ女性の物語、その呪縛から逃れて自立するのは、並大抵の事ではないんでしょうね。現実にも有名人の二世・三世は、プレッシャーからかなり苦戦しているような気がします。私の両親も祖父母も市井の人々なので、そういう意味では、私は全く問題ありません（笑）2019/02/06
しんたろー
254
歩は細々と洋服を作る地味な20代女性。美形と圧倒的歌唱力でスターだった亡き祖母を敬愛しつつも、外見や才能にコンプレックスを抱いていたが、野良猫のような男性モデルと知り合って……こう書くと手垢がついた少女漫画のようだが彩瀬さんの手にかかるとチョッと変わった趣になる……黒真珠と樹脂パールを擬人化して、それが神の視点になって人間の愚かさと可愛さを語らせている。驚くような展開はないが、ハッとさせられる寂しさや切なさを優しく拾い上げる青春小説として創り上げ、自分に自信がない多くの人々へエールを送る童話とも感じた。2019/02/19
いつでも母さん
232
『自分を好きだと思う心を形にしたくて・・』そうだよ、自分を誰かと比べる必要はないのだよ。だけど血縁ならばどうしたって（自分の意思とは無関係に）比べられるのも現実。自分が自分を好きにならなきゃ、心を解放してやらなくちゃ、何処へも行かれないし、何も見つけられないんだ。誰かの人生をなぞるのではなく、自分の人生を歩くのだ。彩瀬まるさん、『珠玉』とは宝石、尊いモノ、美しいもの・・巧いタイトルを付けたものです。誰の心にも必ずあるモノだと思う。自分だけの唯一無二のもの。2019/01/25
❁かな❁
187
彩瀬さんの作品を読むのは10作目。1作だけ未読。彩瀬さんの長編より短編が好み。美しい歌姫だった祖母に全く似ていない歩。身内があまりに偉大過ぎると比較されるので意識してしまうんだろうな。『不在』で苦戦し今作も好みじゃないなぁと思いながらも読み進めたらラスト27ページ以降、急に読みやすくなり数回涙。途中で読むの止めなくて良かった。読者の好みが分かれると思うけどキシ＆カリンの存在も大きい。キシはかっこ良く、カリンは可愛い。少しずつ歩み出す前向きな姿に感動し私も励まされた。装丁は中表紙のテディベアの方がいいなぁ。2019/02/25
fwhd8325
152
不思議な物語と思いました。あまりこういうことはしないのですが、途中で参考文献の一覧を見ました。さらに、不思議な物語だと思いました。でも、それはとても愛すべき物語であることを決定させてくれました。不思議だなと思いながらも、この物語の登場人物に、教務はもちろん、愛着を感じ始めました。それは、描かれている時代感もあるかもしれません。懐かしさのような感覚が、主人公を応援する、親心のような気持ちへと変化していきます。2019/02/26
