内容説明
神さまの手の話、貧しい人々の話、指貫の話、芸術家の話…。2ヶ月にわたるロシア旅行を通じて、敬虔で素朴な民衆の姿に感動した若きリルケ。彼はその後“神さま”という一本の糸で貫かれた13の珠玉から成る短編集を7晩で一気に書きあげた。子供のための話を大人に話して聞かせるスタイルを取り、それぞれの話が淡いパステル画を思わせ、まるでおとぎ話のように静かに語られる。
著者等紹介
リルケ[リルケ][Rilke,Rainer Maria]
1875‐1926。プラハ生れ。オーストリアの軍人だった父によって入学させられた陸軍士官学校の空気に耐えきれず約一年で退学。リンツの商業学校に学びながら詩作を始める。二度のロシア旅行の体験を通じて文筆生活を決意し、詩の他、小説・戯曲を多数発表。後にパリに移り住み、一時ロダンの秘書も務めて大きな影響を受けた。また生涯を通じて数多くの書簡を残している
谷友幸[タニトモユキ]
1911‐1981。東京生れ。独文学者。京都帝大独文科卒。京都大学文学部教授、のち名誉教授を勤める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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匠
111
クリスマスまでに読了するはずが、1ヶ月もかかってしまった。神様についての子ども向けのお話を大人に語るという設定で構成される13の短編集。リルケの作品の中では比較的わかりやすいほうだと思うけれど、読んでいると眠くなったり、いろんなイメージが交錯して段々文字を追うだけになって集中できなくなり、何度も我に返る自分がいた。そんな中でも面白かったのは「石に耳を傾ける人々」と「指甲が神様となるにいたったこと」だった。とりあえずここに登場する神様たちは、限りなく人間に近くて、なおかつ自然そのもの。そこが逆に共感できた。2014/01/17
KAZOO
104
リルケがロシアへ旅した後に20代の時に書かれた作品集です。10数編の短編の子供向けのような(確かに大人が子供に話して聞かせている体裁をとっています)あるいは信仰深き人のために書かれている感じで今まで読んだ彼の作品とは雰囲気が異なる気がしました。読んでいるとイメージが浮かんでくるような気もします。かなりの短期間で書き上げたということのようですが、そんな感じは全然しないですね。2023/08/27
syaori
56
子供に「ずっと美しい形」で伝えるために大人に語るという趣向でリルケが綴る小品集。神さまが直接登場なさる話もありますが、過半を占めるのは、死にまつわる「ひとつの感情」を語ってみようとする『正義のうた』、愛と死について語る『死についての物語ならびに筆者不明の追記』など神さまは登場しない物語。ただ、そんな「愛と生命にたいする」悲しく美しく、時に滑稽な物語を通して作者が語っているのは神さまのこと、美という「節穴」を通して見える「神の痕跡」であり、つまり「人生は、じつにすばらしいもの」だということなのだと思います。2021/12/24
ケロリーヌ@ベルばら同盟
55
25歳の若き日のリルケが、2ヶ月にわたるロシア旅行中に着想を得て、7日間で一気呵成に書き上げた本書は、1900年のクリスマスに初版が刊行されました。何れも神さまがモチーフとなった13篇が、芳醇な言葉と、流麗な語り口で綴られています。おとぎ話や民話の面影を残し、隠喩や仄めかしをちりばめた物語は、浅学非才の身には、意味を理解できない箇所も多々ありましたが、クリスマスのみならず、特別な日の贈り物として、100年以上の長きに渡り愛されている事には得心がゆく、美しい一冊でした。2021/07/08
NAO
54
リルケが紡ぐクリスマスのための神さまにまつわるおとぎ話たち。神さまのことが書かれているのだが、万能でなかったり、ロシア的な多神教の雰囲気を持っていたりと、カトリックでは考えられないような話も多く、さすがプロテスタントの国だなあと思った。『指甲が神さまになるといったこと』『どうしてロシアへ裏切りなどがやってきたか』はウィットに富み、『石に耳を傾けるひとについて』を始めとする芸術論も興味深かった。2016/12/24
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