内容説明
ある寒い日、雪のひとひらは生まれた。地上に舞いおりたときから、彼女の長い旅がはじまった。伴侶となる雨のしずくとの出会い、新たな命の誕生。幸福なときも試練のときも、彼女は愛する者のために生きた。やがて訪れた、夫との永遠の別れ、子どもたちの門出。雪のひとひらは、その最期の瞬間、自らの生の意味を深く悟る―。自然の姿に託して女性の人生を綴る、優しく美しい物語。
著者等紹介
ギャリコ,ポール[ギャリコ,ポール][Gallico,Paul]
1897-1976。ニューヨーク生れ。スポーツライターを経て作家になる。1941年に発表した『スノーグース』で一躍有名となった
矢川澄子[ヤガワスミコ]
1930‐2002。作家、詩人、翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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zero1
211
我々は何のために生まれ、どこへ行くのか?哲学的な問いを擬人化してキリスト教の世界観で表現。「雪のひとひら」は空から降りてきた。雪ダルマになり、春に溶けて流れる。伴侶が見つかり子ができるが、火との戦いが待っていた!川や湖を下り、家族と別れ海へ。やがて彼女にも終焉の時が・・・原マスミの挿画が素晴らしい!「スノーグース」で知られるギャリコ50代の作品。水の惑星、地球に住む我々は、水の大切さを忘れてはいないか?いつまでも、この美しい星を守らねば。本書から学べるものはとても大きい。レビュー200冊目にふさわしい。2019/02/11
匠
185
ひとひらの雪が一滴となって伴侶と出会い子を設け、さまざまな試練と幸福を経験しながら最期を迎える時なにを想うか。ページ数も漢字も少なめで、小さくてかわいい挿絵が描かれ、大人の童話のような感覚。ひとりの女性の一生に例えつつ、生命の神秘、よろこび、そしてその人生の意味を優しい眼差しで探った奥深い作品で、美しい言葉で綴られた訳も素敵だった。がしかし女性に限定しなくてもいいし、与謝野晶子の短歌がたくさん引用されている訳者のあとがきは読み手の自由な空想を妨げる恐れもあるので、本編より先に読まないことをオススメしたい。2014/02/27
❁かな❁
180
表紙も綺麗で素敵ですが内容もとても綺麗で美しいです*女性の一生を雪のひとひらとして表現されています。雪のひとひらの一生が見事に女性の一生と同じでとても理解でき、共感もでき、切なくもなりました。初めて恋をするところから家族を思う心など上手くわかりやすく表現されています。雪のひとひらの心理描写が丁寧に描かれていて、とても優しく強く素晴らしかったです。カフェ読書だったので泣くのを堪えて涙目で読んでました(இдஇ; )宗教的な雰囲気もあり、命についても考えさせられます。とても深く儚く美しい素敵な作品でした*2015/03/01
雪うさぎ
180
遠く遠くから舞い降りてきた雪のひとひら。溶けないようにそっと包みこむ。綿菓子のかけらのように清らかに輝く。どこからやってきて、どこへいくの? 今、旅の途中なの?あなたにも命があり、物語があることを知る。あなたを知って、小さな幸せがあることに気づく。ありふれた日常が、風景が、愛おしくなる。あなたは私、私はあなた。ともに生を受け、やがて死ぬ。大きな意志が命を巡らす。それは解き明かせぬ神秘。あなたと私は今日出会い、そして別れる。しかし、同じときを生きている。私は、ふっと息を吹きかけ、あなたをもとの旅路に戻す。2014/12/26
めろんラブ
168
この世に生まれ落ちてから、天に召されるまで。雪のひとひらの一生は、”生きるとは”という哲学を示しているようで、荘厳な物語と感じました。美しい情景描写に連れられて彼女の旅を追体験するうちに、「今この時を懸命に生きる」というひとつの原理に辿り着いたように思います。雪が降る静かな夜の読書にオススメ。2015/10/19