内容説明
ジェリーは23歳、学業半ばにして戦争に駆りだされ、空軍に所属している。大人になりきれないうちに地獄をみてしまった孤独な若者たちのひとり。心は戦争のすさまじい恐怖と不安にひどく傷ついている。故郷には美しい婚約者を残してきているけれど、彼の孤独な魂を癒してくれるのは、別の女性なのだった…。ふたりの女性の間を揺れ動く青年の心理を繊細に描きだす感動の恋愛小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tetchy
102
胸が張り裂けそうな物語だ。2人の女性との恋の狭間で苦しむ男の物語。それは青年が大人になるための儀式でもある。苦悩し、そして自身の決断に責任を取ることを自覚するために与えられた試練である。主人公ジェリーの前に現れた2人の女性、キャサリンとパッチズ。幼なじみの女性と戦地で出遭った女性との間で揺れる恋の葛藤。これはまさしく『ドラゴンクエストⅤ』である。主人公の最後の選択には賛否両論あるだろう。ただこのまだ若くて未熟な2人の決断が周囲の人々から祝福を得られるように願って止まない。読後、読んだ人と語りたくなった。2025/04/11
詠月
10
孤独と愛の戦争文学で、猫度は低いです。兵士の廃れた心を故郷で癒すのは難しいのだと思いました。地獄を見てきた人が故郷に帰って生じる違和感、いままで通りの生活を送れるかと悩み苦しむ描写がリアルに感じられました。2013/08/07
タリコ
9
2人の女性を天秤にかけて煩悶する男…とまとめちゃうには背景がシビア。戦時下で、飛行機乗りの主人公はPTSD。前線で戦う者と故郷の家族との認識の隔たりもあり、育ちの良い主人公が選択を迷うさまがたっぷりと描かれ、人間だもんね…と思わされる。また、敷かれたルートから外れようとする息子への家族の嘆きからは依存とか支配のようなものも見え、親とは?ということも考えた。結局主人公はあることを確信し決断するのだけれど、それもこれも全てが戦争に起因したのだと思うと苦しい。みんな幸せになってー!という気持ちになりました。2023/10/27
エミリン
6
キャサリンや家族はどうなってしまうのだろうと思いながらも、戦時下のことなので、それなりに受け入れるしかないのかもと思ってしまう。大きな荷物を背負いながらも、愛する人と二人ならきっと乗り越えられるかも…2013/11/06
ゆきのすけ
6
読み終わるころには、ジェリーになりきってパッチズとなら生きてゆける、と信じている私がいた。パッチズへのあふれる想いに戸惑うジェリーの様子に甘ずっぱい若さを感じる。「ありのままの自分になり、ひるむことも打ち消すこともせず真実に直面できるようになって、初めて人は大人になるのだ。その真実とは、この世には痛みをともなわない幸せとか、挫折感のない勝利とかいったものは存在しないということだ。進んでゆく道には喜びも、うっとりするような美しいものも待ち構えている。だが背負うべき重荷もまた常にあるのだ。」2011/03/03