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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
382
タイトルの由来は、まさに物語が佳境に入ろうとするあたりで明らかになるし、そうすると結末もまた見えてくる。本書は、あたかもミステリーのごとき様相を有しているのだが、仮にミステリーだとすれば、伏線の置かれ方も見え透いているし、結末の与え方も凡庸ということになる。では本書があえてミステリーを装うことで、描き出したものは何か。それは、新聞人の、政治家の、芸術家(この場合は作曲家)の持つ「俗」なる側面を暴いたことにあるだろう。従って、この小説そのものもまた通俗的なのである。あえて、と言えばそうなのだが。2018/08/22
Vakira
57
ポンコツになる事を「アムスて~」(イッコウ風に)と言う。例えば物忘れが酷くなってくるとマーキュアンに「アムスってるゾ~」と言われちゃう。最近ケンちゃん(大江健三郎)の本を読んで本の題名の元になったメタファーを考える遊びに嵌っている。文楽だからね。この本は面白かった。どこが面白かったのか?僕の好きな映画監督にコーエン兄弟がいる。彼らの描く物語は浅はかな企みと予期せぬ展開に喘ぐ登場人物たち。これがMy琴線を鳴らす。マーキュアン初読みですが、My琴線響かせる企みと予期せぬ展開。もうビンビン。2019/04/20
タツ フカガワ
54
ロンドンの社交界を華麗に奔放に生きたモリー・レインの葬儀で、有名作曲家クライヴ、新聞社の編集長ヴァーノン、そして外務大臣のジュリアンが顔を合わす。3人はそれぞれモリーの元恋人で、なかでもクライヴとヴァーノンは友情関係にあった。やがてモリーが生前撮ったスキャンダラスな写真をヴァーノンが入手。低迷する新聞のスクープにしようと企画するが、そこからこの3人の破滅が始まっていく。知性豊かな文章に皮肉と辛辣を加味したドラマで、読了後、エピグラフのW・H・オーデン「交叉路」の一文を読み直して納得。面白かったです。2025/09/19
こばまり
52
連鎖してヨレヨレになっていく男たちの姿をコメディとして読みました。発端となる女性がミステリアスで魅力的。しかも恨まれてない。イイ女だったんだろうな、きっと。主人公が紡ぐ音楽の描写が緻密で美しかったです。ブッカー賞受賞作。2016/05/10
ふう
52
どこでこの本を知り読もうと思ったのか、思い出せません。タイトルに惹かれたのか、どなたかの感想を読んだのか…。おもしろいと思って読んではいたのですが、読みなれない文章に時間がかかってしまいました。社会的な地位も名誉もある二人の男が、かっての恋人の死と残された写真を巡って人生の歯車を狂わせていきます。その破滅へと向かう危うさに気が滅入ってしまいました。そして、まさかのラスト。お互いの最後を引き受けるという友情なのか、友情はもはや存在しないという憎しみなのか。「アムステルダム」の意味を知るとさらに気が滅入ります2014/07/30
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