内容説明
深く恋しあう18歳のヘレンとクリス。ヘレンの部屋での初めてのセックス、そこからすべては始まった―ディア ノーバディ、とヘレンは、息づく小さな生命に語りかけていく。逡巡と決意と切なさと喜びを。一方クリスは悩む。彼女にとって、もはやぼくはノーバディなのか。九か月間の二人の別々の旅、そして再会…。英国・カーネギー賞受賞。産経児童出版文化賞受賞。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
白のヒメ
49
人間というものはもともと弱い生き物だ。だけど、人の為に生きようと決めた時、強くなれるのだろう。母親が強いと言われるのは、自分の体の中で育っていく命を実感し、その命の為に生きようとする決意からなのではないか。それが未婚の18歳の少女の決意だとしたのなら、どれだけの不安と迷いを乗り越えた強さだろうか。主人公はまだ生れ出ない子供を「ノーバディ」と呼び、手紙を書いて語りかける。迷いながら苦しみながらも、真摯に自分の中の命に向き合おうとする言葉に胸が震え、何度も文字がにじんだ。カーネギー賞受賞作。2015/01/24
Y.Yokota
6
ヘレンの変化は、妻の同じ様なところを見たばかりなので驚かない。むしろ、肉親との関係を解決できない自分にとっては、母親へひたすら踏み込んでいくクリスとヘレンの行動は信じられなくも羨ましく思う。現代ではこのようなテーマは特別ではないが、物語としてとても優れていると感じた。ヘレンから見てクリスが"過度に"ロマンティストであると言う設定も効いているし、イェイツの詩を用いた所も良い。序盤、クリスの父親と雨の場面を良いと思えたなら、この本を読んで後悔を感じるということは無いと思う。2017/12/27
桜もち 太郎
6
イギリスの青春物語。主人公は18歳のクリスとヘレン。ヘレンの妊娠をきっかけに思い悩む二人。ヘレンの母、祖母の関係が生まれてくる子供をきっかけに分かり合っていく。子は鎹とでも言うべきだろうか。ディアノーバディと語りかけるヘレン。まだ見ぬ子供、クリス、ヘレンの繋がりをあらわす言葉がディアノーバディ。児童文学ということだが命を慈しむ文学作品。いつものように自分に当てはめると、いつものように夢の中の世界のお話。2015/03/21
ちぇけら
3
ディアノーバディ。それはあらゆる人に向けて語られているようだ。母になるということ。父になるということ。それは個々それぞれの捉え方があるだろうし、それぞれの正解があるだろう。もしくはそんなものなんて存在しないのかもしれない。でも少なからず、何かを考え、求め、行い、生きていかなければならない。ヘレンとクリスはどうすべきだったのか。ノーバディとしてでしかありえなかったのか。ありきたりの話ではあるが、それをそれだけで片付けてしまうのにはもったいないと思わせてくれる物語だった。2016/05/31
麗子
3
最近読んだ、河合隼雄さんの著書に出てきて気になってたこちら。本屋さんで探しても、絶版になってて結局アマゾンで中古を購入。そこまで古い本でもないのに絶版なんて、人気なかったのかしら??だとしたらもったいない!コレはわたし個人的には、多くの人に読まれるべき作品と思った。一見(一読)単純なテーマに感じられる可能性もあるが、実はかなり壮大な物語です。あとからじわじわくるハズ。老若男女誰にでもオススメしたい一冊。2014/10/11
-
- 和書
- 植物 学研の図鑑LIVE