内容説明
時はロシア革命と第一次大戦の最中。英国のスパイであるアシェンデンは上司Rからの密命を帯び、中立国スイスを拠点としてヨーロッパ各国を渡り歩いている。一癖も二癖もあるメキシコやギリシア、インドなどの諜報員や工作員と接触しつつアシェンデンが目撃した、愛と裏切りと革命の日々。そしてその果てにある人間の真実―。諜報員として活躍したモームによるスパイ小説の先駆にして金字塔。Star Classics名作新訳コレクション。
著者等紹介
モーム,サマセット[モーム,サマセット] [Maugham,William Somerset]
1874‐1965。イギリスの小説家・劇作家。フランスのパリに生れるが、幼くして両親を亡くし、南イングランドの叔父のもとで育つ。ドイツのハイデルベルク大学、ロンドンの聖トマス病院付属医学校で学ぶ。医療助手の経験を描いた小説『ランベスのライザ』(1897)が注目され、作家生活に入る。1919年に発表した『月と六ペンス』は空前のベストセラーとなった代表作である
金原瑞人[カネハラミズヒト]
1954(昭和29)年岡山県生れ。翻訳家、英文学者。法政大学社会学部教授。訳書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
しゅう
132
サマセット・モーム、初読み。これは面白かった。想像の斜め上を行く面白さ。舞台は第一次世界大戦の最中、スイス。タイトルそのまんまだが、英国諜報員アシェンデンはスパイ活動に従事している。実際のモームもその通りだったそう。この小説の一番の魅力は、登場人物の描写の細かさにあると言えよう。髪の毛がなくていろんなヅラを着用するメキシコ人のスパイ、反英国活動を行うインド人の愛人である踊り子の女、ドイツの二重スパイの男、と枚挙にいとまがない。連作短編の一作一作のぶった切り方もここしかないという終わり方。訳もよかった。2025/11/17
Panzer Leader
98
実際に英国諜報員だったサマセット・モームの連作短編集。派手なアクションシーンがあるわけでもなく、さりとてル・カレのように厳しい世界を描いているわけでもないが、アシェンデンの沈着かつ冷静な観察眼による人物描写に重きを置いたリアル感溢れるスパイ小説。2022/11/26
マエダ
96
かなりの部分が作者の実体験をもとに書かれているという本書。物語ももちろん面白いがどこと言えないような会話の切れ味がモームの魅力。金原瑞人さんとモームの組み合わせは本当に面白い。2017/10/24
Kajitt22
85
人間観察の達人サマセット・モームによる『英国諜報員アシェンデン』。人物描写もそうだが、平易で読みやすい文章にふりかけられたアイロニーとユーモアのスパイスが効いている。主人公アシェンデンはモームその人だろう。第一次世界大戦を背景に揺れ動くヨーロッパをうまく切り取り描いている。最後、革命前夜のペテログラードの描写は圧巻の臨場感だが、そこに洗濯物がでてくるのがモームらしいと言えばいいのか。2018/04/17
星落秋風五丈原
69
小説論をあれだけ前説で力説するモームのことだから、意外性があってもきちんと収拾をつけてくれるのだろうと期待するが、全てがそのような終わり方をしていない。「えっ、これで終わりですか!」みたいな結末になっている短編もある。言ってることと書いてることは別ってことでしょうか?本編は作家にして英国諜報員アシェンデンの活躍譚である。諜報員と聞いて皆が真っ先に想起するのはイアン・フレミング描くところの007だろう。アシェンデンにも上司はおり、Rという男性だ。2017/08/02
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