出版社内容情報
生も死も無意味――。これは20世紀初頭の欧州で、ある魂が得た究極の自由の表現。
医学を志すフィリップの前に現れた美しくも傲慢な女ミルドレッド。冷たい仕打ちにあいながらも、彼の魂はいつか彼女の虜となっていく。ミルドレッドは別な男に気を移し、彼のもとを去って行くが、男に捨てられて戻ってきた彼女を、フィリップは拒絶することができない。折からの戦争に、株の投機で全財産を失い、食べるものにも事欠くことに……。モーム文学を代表する大長編小説。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
星落秋風五丈原
57
【ガーディアン必読1000冊】本編は上巻でも少し登場したミルドレッドとフィリップの別れてはまたくっつく悪縁ループである。他につきあっていた女性ノラがいたにもかかわらず、フィリップはミルドレッドを見捨てられない。物語なのだから、さっさと勧善懲悪、因果応報の枠におさめてしまえばいいものの、ミルドレッドは何度も彼の前に現れる。自分の事しか考えないとんでもない女性ながら、ミルドレッドが魅力的なのも事実だ。どうしても彼女を振り払えないフィリップは、若い日のモームだったのかもしれない。2020/09/19
びす男
56
コンプレックスに悩み、夢に敗れ、恋に報われず、一時は食にもありつけなくなる主人公。そんな彼のもとを、相変わらず多くの人間が訪れ、そして立ち去っていくのだった。一切が無常に過ぎ去るなか、なぜ人は生きるのか。辛酸を舐めながら身を刺すような疑問に悩んだ彼も、数多の不幸を目の当たりにし、時に優しさに触れるうちに、少しずつその答えを悟っていく。人と人との「絆」を手繰るように続く人生を感動的に讃えた、紛れもない傑作。「興奮も倦怠も、快楽も苦痛も、すべては明るい心で、受け容れなければいけない」。あとで書評かきます。2014/11/20
ももたろう
50
この作品は『人生の意味』を徹底的に追求したモーム渾身の教養小説である。苦しみもがきながらも、人生の意味を求めながら生きる主人公。絶望のどん底で「人生は無意味だ」という事を悟り、「意味」の縛られから自由になる。その後「ペルシャ絨毯の哲学」の答えを見出す。織匠が絨毯を織り出すようにして、我々も人生という絨毯を作っていく。自分に起こる出来事は、運命の大いなる筋書きの中にある。幸も不幸も、絨毯の模様の一部でしかない。そこに拘われば模様が複雑になるだけだ。運命の運行に身を任せながらも美しい模様を織り出せばいいのだ。2017/02/20
りつこ
45
自分と重ね合わせもするし、母の気持ちになってハラハラドキドキもするし…感情を揺さぶられながら、楽しく読んだ。最後まで読んで一緒に長い旅をしたような満足感でいっぱいだ。「人生は無意味だ」その言葉が耳に残る。素晴らしかった。2015/06/06
ビイーン
33
下巻の途中から物語にグイグイ引き込まれた。圧倒的な読後感に浸れる作品であった。多くの庶民の人生は、仕事をし結婚して子供をつくり、そして死ぬ、そんな平凡な人生で終わる。若い頃は一度きりの人生だから成功しなければという観念に囚われ過ぎていた。そして思うようにならない事に嘆き苦しみ、平凡な人生を毛嫌いしていた。しかし歳を重ねるにつれ、現実を受け入れ妥協する事を覚える。「人生に意味はないのだ。ただ好きなように模様を描けばそれでいい」相当に意味が深い。2024/07/26
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