感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こばまり
48
酒に浮腫み脂の浮いた顔、汗の滲んだ白麻のスーツ、刻一刻と色を変える海、飲み込まれそうな森林、満点の星空。描かれるのは適応できなかった者たちの、つらいしんどいやるせない人生ばかりだのに、俄然タヒチに行きたくなる。憧れる。2023/03/17
tototousenn@超多忙につき、読書冬眠中。
26
1921年に出版された短篇集「木の葉のそよぎ」から選ばれた4篇の短篇集。
イロハニ
18
所謂「南海もの」内の4短篇〈太平洋、マッキントッシ、エドワードバーナードの転落、淵〉と続く。訳は平易。南太平洋に点在した白人の人間模様。〈マッキ…以下の主人公の男は皆どの様な行く末か?各篇南海描写が秀逸。仮に真冬の炉辺で頁を繰るも心には南海の天空からの陽の直射…ラグーンを渡る風…宵闇に開く花の香り…が臨場する。冒頭の〈太平洋〉は邦文僅か726字の小品だが茫漠たる大海原の描写に何を託している?『太平洋は気まぐれで変わりやすい、ちょうど人のこころのように。』…主人公達の命運のそよぎは、その潮力の為せる業か 2022/11/25
きりぱい
7
南洋の島の魅力に依存してゆく白人、馴染みきれない白人たちの悲劇。タヒチやサモアでの暮らしに魅入られ、そこに精神的なゆとりや落ち着きを見い出せる者も、白人社会からすれば、いかにも土着で怠惰な生活にしか見えなかったりする。何をもって人生の充実とするか、「エドワード・バーナードの転落」などは白人の社会観の狭さが何とも皮肉。何が尊敬と軽蔑の的になるか、白人気質と島民気質の相容れなさで、短編集Ⅰの『雨・赤毛』より皮肉さがいや増ししている。2010/11/28
Mana
5
図書館で見かけたので久しぶりにモームを再読。マッキントッシュは初めて読んだけど、スリラー的な雰囲気で最後の方はドキドキしながら頁をめくっていった。卑劣な人間として描かれていたウォーカーの最後の振る舞いに、人間性の複雑さが現れていると感じた。2015/07/20