感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
125
翻訳が生硬でやや読みにくいのが残念だが、この小説の良さは伝わってきた。ブルターニュの海岸に避暑に来た16歳の少年フィルと15歳の少女ヴァンカの恋を描いた小説。繊細華麗なコレットの筆が素晴らしく、まるで印象派の絵を見ているかのよう。海のきらめき、ヴァンカの瑞々しさ、花の妖しさと美しさなどが忘れがたい印象を残す。二人の清純な恋はフィルが自分より何歳も年上の女性に惹かれた時に、終わりを迎える。終盤でヴァンカの体から踏まれた青麦の匂いが漂うところは美しく、この小説の詩的なクライマックスではないかと思った。2016/05/15
藤月はな(灯れ松明の火)
86
幼馴染の恋の芽生え。しかし、少年が肉欲を覚えた時に愛と肉欲との狭間に戸惑うことになる。そしてある妥協点を見出したことで二人の初恋は苦い終わりを迎えた。美麗な仏文翻訳で有名な堀口大學氏の訳には本当に惚れ惚れするわ・・・。だけど、青さからだとは言え、すぐに「愛のために死のう/死ぬよ」とかほざくフィルにはうんざり。そういう『ロミオとジュリエット』とかの古典的ロマンチシズムの証明は今となっては迷惑そのもの。それに女心を解さずに他の女に心を移した言い訳を延々と繰り出す男なんて、どんな女も願い下げだと思うな・・・。2017/02/18
えりか
39
フランス映画のようでした。16歳。大人になりかけて肉体的な欲求をもて余す、と同時に心は純粋であり続けたいと願う。その体と心のバランスがとても不安定な年齢。「初めて」の後、何かが変わってしまったのだろうかと不安になりながらも、自分は大人になったのだと思いもして、何かを失って何かを得た気になる。大切な女の子がいるにも関わらず、魅力的な女性との肉欲へ溺れる男の子…。そうして、恋人も自分も傷つけていく。とても若くて痛々しい程に繊細な二人を夏の青さが照らしている。2015/10/22
TSUBASA
24
16歳の少年フィリップと少女ヴァンカは幼なじみで、二人は生涯ともに生きて行くことを約束された仲だった。毎日会うことが出来た夏休みも終わりに近づいた頃、フィリップは白衣の看護師に出会う。彼はその中年女性と初めてのアバンチュールを過ごしたことでヴァンカとの仲に亀裂が入る。非常に感情的で情景描写の多い文体が読みにくかった。少年少女の感情が剥き出しになるやり取りにおいてはぴったりだったけど。最終的に二人は愛を取り戻したようだけども、この一夏の経験は遅効性の毒のように将来に影を落としているように見えてならない。2015/06/27
musis
21
親たちを「影」と表現しているところにどきっとした。自分がこの年齢だった頃に持っていた想いを、的確に表しているような気がした。フィルのような経験からでないが、ふと日常的にみていた世界に嫌悪する揺れも、覚えがあった。今は、当時の心の強い揺れをリアルに思い出すことはできないけれど、自然としくしくと哀しさが湧き上がってくる本だったと思う。2014/06/05
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