出版社内容情報
トムとの冒険で大金持になった浮浪児ハックは、未亡人の家に引きとられて教育を受けることになった。固苦しい束縛の毎日――飲んだくれの父親が金をせびりに現われるに及んで、逃亡奴隷の黒人ジムとハックの脱出行が始まった。筏でミシシッピー川を下る二人を待ち受けるのは、大暴風雨、死体を載せた難破船、詐欺師たち……。現代アメリカ文学の源泉とまで言われる作品。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
111
南北戦争以前のアメリカ南部を舞台に描かれたとされる古典で1884年の出版。『トム・ソーヤーの冒険』はいたずら好きの男の子を主人公にした毒のない物語だったのに対して、『ハックルベリー』は語り口こそ平易だが、人種差別や人身売買など重いテーマが描かれる。そして人が簡単に死ぬ。『トム・ソーヤー』の続編的な作品だと考えていたけど、はるかに深く、奥行きがある物語だと思う。主人公の性格も、生まれついての野生児であるハックに比べると、トム・ソーヤーは「昔は随分ヤンチャをしたもんだ」と言いつつ普通の大人になるタイプかな。2015/11/25
ハイク
95
1830-40年頃の米国中西部を舞台にした物語である。イリノイ州とミーズリー州等の境を流れるミシシッピ川とその沿岸が活動の場所だ。主人公のハックルベリー・フィンと黒人のジムの川の下流の方面へ行く冒険物語だ。物語の背景に南北戦争以前の頃の黒人奴隷制度への批判や若者の冒険へのあこがれ等が描れる。同時にアメリカ中西部のミシシッピ川の自然の雄大さも描かれていて、アメリカの青少年へ大きな影響を与えている本と推定される。後半にはトムソーヤーも登場してくる。いずれにしても世界の青少年達に勇気を与えた本なのであろう。 2018/05/22
nakanaka
93
「トム・ソーヤーの冒険」に引き続き読了。やっぱり面白い。傑作。話の内容はトムやハックの活き活きとした冒険譚から人種差別や犯罪といった社会的な事柄に移ってきているように感じる。「黒んぼ」というワードがやたら出てくる。当時の奴隷制に一石を投じる作品だったのだろう。終盤で再びトムが登場してくるのが嬉しい。「トム・ソーヤーの冒険」に比べ、作中のトムやハックの言動がだいぶ大人びているような印象を受ける。最後は清々しい終わり方。ヘミングウェイも含めアメリカ文学に俄然興味が沸いてきた。2015/11/23
Rosemary*
64
ハックが酔いどれの父親や、堅苦しい生活から自由を求めて冒険に旅立つお話であるが、そこには当時の奴隷制度が色濃く反映されている。途中、逃亡奴隷のジムと行動をともにするうち、彼の人間味溢れる行動に友情をも感じるが同時に良心の呵責に苛まれる。生まれた時代、環境により社会の善悪の尺度も変わってくるからなのでしょう。トムが現れてからの脱出劇はとても愉快でなんとも楽しい結びとなりました。【英ガーディアン必読1000】2015/12/14
催涙雨
63
現代日本人が急にこれを読んで雷に打たれたような衝撃を味わうことはたぶんほとんどないと思うが、一方でアメリカ文学史に深い関心を抱いているわけではなくてもヘミングウェイの言わんとしていることはたいていの場合それなりに腑に落ちるものだと思う。少なくともわたしはそうだった。この作品を読もうと思ったそもそもの理由がヘミングウェイの有名な文言だったからなのかもしれない。たとえば行く先々で登場する悪漢のような白人たちと人柄のすぐれた黒人の対比。虐げられて無知であるがゆえにつくられた人柄にも思える面はあるが、価値判断のも2018/11/28