内容説明
1928年、28歳のヘミングウェイは、キー・ウエストに居を移した。戦争と革命と大恐慌の’30年代、陽光降り注ぐこの小島に腰を据え、気鋭の小説家は時代と人間を冷徹に捉えた数数の名作を放ってゆく。本書は、経験と思考の全てを注ぎ込んだ珠玉短編集『勝者に報酬はない』、短編小説史に聳える名編「キリマンジャロの雪」など17編を収録。絶賛を浴びた、新訳による全短編シリーズ第2巻。
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- 評価
本屋のカガヤの本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちびbookworm
103
★2.5.パリからキー・ウェスト(地図で見ると、ほぼキューバ。アメリカの中の南国)に住居を移した頃の短編集。◆ほとんどが暗いし、戦争体験や男女のもつれの一部分を記した短編たちはあまり好みではない。◆「父と子」「フランシス・マカンバーの短い幸福な生涯」は○。後者はサファリ狩猟体験をもとにしたもの(「ライオン」へのイメージは、当時と今でまるで違う。今は犯罪の可能性もあるし、大バッシングを受けるだろう。)。死や夫婦崩壊を暗示させるものが多い。◆「キリマンジャロの雪」も名編とは感じなかった。2022/09/06
NAO
80
短編集『勝者に報酬はない』は、その題の通り全作品に虚無感が漂っている。「嵐のあとで」は、素材は違うものの『老人と海』と全く同じ内容。人には不運がついてまわるというのはヘミングウェイの持論だったそうだ。『フランシス・マカンーバーの短い幸福な生涯』と『キリマンジャロの雪』は、作者のサファリ体験をもとにした話。『キリマンジャロの雪』では、ちょっとしたケガをちゃんと治療しなかったために壊血症になった主人公が自分の死を予感する心理が細やかに描かれている。2020/02/02
巨峰
64
「キリマンジャロの雪」だけ中坊の頃よんだことがある。特に後半の3つの中編が非常に読み応えがあったです。死と隣り合わせの感覚みたいなのがたまらん。また読み返してみたいと思います。「フランシス•マカンバーの短い幸福な生涯」「世界の首都」そしてやっぱり「キリマンジャロの雪」2018/04/29
カザリ
59
再読したけれど、おもしろくはないなと思う。昔はすげ~、がっこいい文体だ!と思ったものですが。。ヘムよりもじつは訳者さんの高見さんが大好きです。トマス・ハリスとか、バリウッドとか、大好きな作家を訳していらっしゃいますが、むしろ高見さんが訳しているから面白くなったんじゃないかなと思いました。バナナフィッシュで出てきたキリマンジャロのトラ?から派生して再読。2014/09/11
帽子を編みます
47
順番に読んでいき悪くはないのですがしっくりはこない、と思っていましたが、『キリマンジャロの雪』に魅了されました。5行のエピグラフがまず良い、これだけでいくつもの小説の題材になりそうです。主人公、この死にゆく作家、もはや痛みも感じず、振り返るのみ、あれもこれも、やれば良かった、書きたかった。パートナーへの理不尽な侮蔑混じりの感情も、読者にはキツイですが、もう生きることが出来ない自分への苛立ちが綴る言葉。字体を変えて述べられる小説の題材、彼の長編小説のあれこれを想いますが、純粋に読んでみたいと刺激されます。2024/08/31