出版社内容情報
極貧の小作農から這い上がった王龍(ワンロン)の心は、大富豪となってからも大地を離れることはなかった。だが、三人の息子たちは農民にはならず、それぞれの道を歩み始める。王大(ワンター)は地主に、王二(ワンアル)は商人に、そして王三(ワンサン)は王虎(ワンフー)将軍と呼ばれ、恐れられるほどの軍人になった。年老いた王龍が死に瀕したとき、その枕元で息子たちは、両親の血のにじむ努力を経て手に入れた土地を売る相談を始める。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
133
王龍の莫大な遺産を相続した息子たちは三者三様の人生を歩んでいく。父親の性質をそれぞれ異なった形で受け継いだ兄弟の中でも、軍閥となって王朝設立に野心を燃やす三男王虎の人生がここで中核となる。一見冷酷なようで実は純粋で情に熱い彼が、匪賊相手に智略を駆使した攻防を繰り広げたり、最初の妻や部下に裏切られて孤独に陥ったりする様は中世の戦国ドラマのようにスリリング。地主を継いだ長男の冴えない人生と比べると、人間と大地の関係が変質したことが示唆されているようで、学があり纏足していない女性の登場も時代の変化が現れている。2018/09/02
Willie the Wildcat
58
家族のあり方の変化、そして社会の多様性などの齎す価値観の変化。血縁、地縁などの”縁”。結果論として、得ることで失うモノ。親としてのジレンマ。「私のような苦労を子供達にさせたくない!」という私自身の母親の言葉を思い出す。色、金、そして権力ボけの3兄弟。唯一、王龍・阿蘭の最期に敬意を示した点と、遺産相続で揉めない点が救いか・・・。三者三様如、何に心の静寂に辿り着くかと共に、一家と距離を置く土の家と梨花の今後も見所。2015/10/09
Gotoran
58
大富豪になっても終生『大地』を離れることがなかった王龍。親の心子知らずの子供達。農民とならず、文学を学び地主になった長男王大、商人になった二男王二、家を飛び出し軍人となった三男王三(王虎)。本巻は王虎の軍閥としての出世物語が中心。王虎が殺した匪賊の頭の妻であった女を溺愛し妻にするが、裏切られ自棄になり兄たちが夫々世話をする嫁を2人とも娶る。王虎を資金面で支援する兄たち、女性には疎いが弱気を助け強気を挫く正義感の王虎、王龍の知的障害の娘、王大の身体障害の息子と暮らし、いつまでも王龍を思う心根の優しい梨花。2014/06/25
スター
48
2巻目も、物語を堪能しました。一巻目の主人公王龍は、貧しい農民から一代で大富豪になったものの、死亡。 2巻は後に残された3人の息子にスポットが当たります。贅沢が好きな長男の王大、商売上手な王二、軍人として出世した王三。 王三はやがて王虎将軍と呼ばれるようになり、清朝が倒れ、軍閥が群雄割拠する中国で活躍し、物語は三国志やキングダムを思わせるような展開に。2020/11/24
キムチ
44
同じ腹から出たのに、王龍の3人の息子の異なり様がくっきりと描かれる。筆者が心を込めたのが王虎こと王三であろうか。大地に根付いた王家の血がむくむくと育っていく情景が目に浮かぶ。一人残らず、どの人物もくっきりと個性的に描かれるが、梨花と白痴娘、豹将軍の愛人であり、結婚を決めたのに「愛されていない」と長刀でバッサリ殺す女が極だって印象に残る。土色の世界から色が少しずつついた世界へ。王虎の嫁、2人(如何にもと感じられる長兄、字形がそのイメージにあって選んだ女)が生む子らの世界へ繋がって行く。時が広がっていく。2015/09/20