出版社内容情報
孤児として、伯母に育てられたジェーンは、虐待され、ローウッド寄宿学校にいれられる。そこで八年を過した後、広告を出し家庭教師として赴いた先に居たのは子供と家政婦だけだった。散歩の途中助けた人物こそ、屋敷の主人ロチェスターであると知ったジェーンは、彼と名門の貴婦人とのロマンスを聞き、胸が騒ぐ。孤独と戦いながらも不屈の精神で生きぬく女性を描いた青春文学。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
166
エミリーの『嵐が丘』の毒に当たった後、姉のシャーロットの作品を続けて読むことにした。孤児が引き取られた家で冷たくされ、本人の気性の荒さの為に不協和音が激しくなるなど『嵐が丘』を思わせる展開にあせった。相手が酷いことをするには何か理由があるのかもしれない、相手もつらい思いをしているのではないか、とはまったく考えようとしないのがブロンテ姉妹の登場人物たちかと思い始めた頃、場面は寄宿学校に。ここにいる素晴らしい二人のおかげで主人公の考え方も柔らかくなる。そして展開はオースティン的側面を持ってきたみたい。2017/10/16
ケイ
147
4年ぶりに。『サルガッソーの広い海』の『ジェイン・エア』との関連性の指摘を読んで以来、もう一度手に取ってみたかったのだ。ようやく再読。ジェインが自分の力で、それも当時の女性に出来うる限りの精一杯の範囲で、自分の人生を見据えて行動したことに賞賛。しかし、その前提には、酷い環境の中で愛を与えてくれた2人の女性の存在がある。自分が何かしようとする時、それが仕事であれ私生活であれ、最上の環境が整っていることはほぼ無いはずだ。だから、それに不平を言わず、置かれた環境の中で最上を努めようとする姿勢に感動した。2021/09/15
mukimi
138
容姿にも、家族にも、友情にも、財産にも恵まれない幼少期を送ったが故に、より一層その好奇心と感受性と度胸と忍耐を膨らませて、心に夢とエネルギーを隠しもった主人公ジェーンエア。10代の頃、クラスにうまく馴染めなくて悲しい時にはこんな主人公によく自分を投影していたなあ。上巻は辛い幼少期の記述が多いが終盤でやっと、幸福な出会いに触媒されてジェーンの世界が開け始める。早く下巻へ進み、時を超えてあらゆる世代の女性達を鼓舞し続ける名作の本体に触れたい。文章のレトリックが本当に美しい。2023/06/08
のっち♬
113
伯母一家から蔑まれて育った孤児ジェーンは、寄宿学校を出た後に身を置いた家庭教師先で当主ロチェスターに惹かれていく。謙虚だけど自分を偽らない、逆境でも決して挫けないというジェーンの性格が伯母や親友ヘレンとのやりとりに巧みに表出されており、序盤から求心力と読み応えのある内容になっている。特に不衛生で劣悪な環境の寄宿学校の様子は、著者自身の体験が元になっているだけあって描写のリアリティが高い。最大の読みどころはロチェスターとの恋の駆け引きで、彼女のメラメラと炎のように燃え盛る情熱は時代を超えて読者に迫ってくる。2017/08/02
mayu
78
みなしごとなり、引き取られた家で受けたいじめ、寄宿学校での悲惨な生活。そんな中でも、尊敬に値する教師、対等に付き合える友人に出会う。自分ではどうしようもない辛い環境で、理不尽さに耐えながら、持ち前の負けん気で、先を見据え自分の人生を切り開いていく。家庭教師として雇われた先で、自分を認めてくれた相手に抱いた初めての恋心。思い通りにいかないことばかり、それでも負けずに強く生きようとする一人の女性の姿に心を動かされる。下巻へ。2022/02/10