出版社内容情報
永遠の恋愛小説。待望の新訳成る!
寒風吹きすさぶヨークシャーにそびえる〈嵐が丘〉の屋敷。その主人に拾われたヒースクリフは、屋敷の娘キャサリンに焦がれながら、若主人の虐待を耐え忍んできた。そんな彼にもたらされたキャサリンの結婚話。絶望に打ちひしがれて屋敷を去ったヒースクリフは、やがて莫大な富を得、復讐に燃えて戻ってきた……。一世紀半にわたって世界の女性を虜にした恋愛小説の“新世紀決定版”。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
370
高校生の時以来久しぶりの再読。700ページに及ぶ大作なので、なかなか佳境に入らないのだが読了してみると、しみじみとした感慨にふけることになる。ヒースの散在する北イングランドの荒涼としたムーア。姓も名も不明のままのヒースクリフという墓碑銘。この作品もまた、燦然たる孤高の中にある。語りもまた独特だ。基本的にはネリーの回想で語られるという、いわば間接話法によるリアリティのあり方。あまりにも濃密な関係性。凝縮された小説世界―どれをとっても、ここにしか存在しない世界だ。物語の空間に耽溺できる固有の時間がここにある。2013/11/05
遥かなる想い
214
〈嵐が丘〉を舞台にした ヒースクリフと キャサリンの恋の物語だが、改めて読むと ヒースクリフの執念深さだけが際立つ。 彼は 何に復讐しようとしたのだろうか? 三代に渡る 因縁と、長く生きたヒースクリフが 最後に見たものは 何だったのか …19世紀の 雰囲気がなぜか懐かしい、作品だった。2019/05/18
ehirano1
203
世界三大悲劇だか四大悲劇だか忘れましたが、その名に値するのではないかと思いました。読中は何度も打ちのめされ、嵐が丘の住人は殆ど呪われているんじゃないかと思われるくらいで、読むのを止めようかと思ったこと数限りなし。しかし、物語が私を引き戻します、ホントに引き戻されます。このスケールと迫力を体感することで精一杯でした。いやはや圧巻!2023/07/02
抹茶モナカ
148
ネリーという老女中の語る2つの家族の物語。ヒースクリフという悪の半生。どこか、フォークナー的な部分があって、その点が気持ち良く読めた。ネリーという老女中の語りという構造を何処まで信頼して良いのか、後半になって「おや?」と感じる部分があった。翻訳の問題かな、と思ったら、そういう構造みたい。いろいろな要素があって、豊かな小説。2015/01/05
みも
142
荒野に吹きすさぶ嵐の如き激烈な憎悪と鮮烈な愛。強烈なエゴイズムから発出するヒースクリフの熱情が物語の骨格を形成する。彼の厭世的で粗暴で反キリスト的な言動は、徹頭徹尾、悪の権化として描かれる。若い時分に読んだ際には、キャサリンとヒースクリフ二人の魂の共鳴に揺さぶられ、他の事象は霞んでいたが、復讐に執着する彼に対し「許し」の具現者として寛容で献身的なエドガーが造形されたのかも知れないと考えるに至った。また、ヘアトンとキャシーの関係性も意外に濃密に描かれている事に気づいた。翻訳は永川玲二氏。僕の本は集英社文庫。2024/11/25