出版社内容情報
“恐るべき子供(アンファン・テリブル)”と呼ばれた早熟の天才の代表作。O・ヘンリ賞受賞作「ミリアム」を含む傑作短編集。
ニューヨークのマンションで、ありふれた毎日を送る未亡人は、静かに雪の降りしきる夜、〈ミリアム〉と名乗る美しい少女と出会った……。ふとしたことから全てを失ってゆく都市生活者の孤独を捉えた「ミリアム」。旅行中に奇妙な夫婦と知り合った女子大生の不安を描く「夜の樹」。夢と現実のあわいに漂いながら、心の核を鮮かに抉り出す、お洒落で哀しいショート・ストーリー9編。
内容説明
ニューヨークのマンションで、ありふれた毎日を送る未亡人は、静かに雪の降りしきる夜、〈ミリアム〉と名乗る美しい少女と出会った…。ふとしたことから全てを失ってゆく都市生活者の孤独を捉えた「ミリアム」。旅行中に奇妙な夫婦と知り合った女子大生の不安を描く「夜の樹」。夢と現実のあわいに漂いながら、心の核を鮮かに抉り出す、お洒落で哀しいショート・ストーリー9編。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
296
主としてカポーティが20代の時に書いた短篇小説9つを収録。長編の『ティファニー』などとは随分趣きが違う。訳者も解説で指摘しているが、内向的、内面的な作品が多い。巻頭に置かれた「ミリアム」などは、典型的なそうした小説であり、自己の奥深くに内在する、もう一人の自分と向き合う物語である。また、いずれの物語も多かれ少なかれ、孤独な生をテーマにしており、それは時には少年の悲しみであったりもする。どの作品を採るかは好みの分かれるところだろうが、私は「銀の壜」の持つそこはかとない憂愁に強く魅かれるものを感じる。2014/09/09
のっち♬
136
主に20代で執筆された短編9篇。不確かな現実認識、都会の孤独、狂気など人間の非合理性への拘りは本書でも通底している。こうしたテーマとゴシックやシューレアリズムとの相性は代表作『ミリアム』『夜の樹』にはじまる前半5篇で体現され、ドライな筆致が不衛生な車内、奇怪な絵画や人物への感興、密室の閉塞感等をグロテスクに描き出している。一方で『誕生日の子どもたち』以降4 篇はイノセントやユーモアが飛び交う開放感と包容感のある話。妻のおばからの罵りは自虐的。スモールタウンと大都会双方に文学的故郷を持つ著者の早熟が伺える。2023/01/23
buchipanda3
120
初カポーティ。最初の数篇を読み、こういう作風だったのかと少し驚いたが、読めば読むほど物語が醸し出す雰囲気に取り込まれていく面白さがあった。何というか無垢な心が孤独や合理性といった現実に怯え、それを認めたくないかのように幻想的かつ文学的な空想癖を曝け出している感じ。その描写がまた流麗で惹き付ける。終わり方も油断ならない。夢から醒めても得も言われぬ後味が残る。「銀の壜」や「感謝祭のお客」などは違った味わいだがまた良い。解説でアラバマとNYという著者の二面の由来を知り合点。それでも無垢なるものが両面で見られた。2020/12/14
ケイ
92
なかなか読み進められなかった。かなり気が滅入ってきてしまって。気温の寒さと同時に何ともいえないぞっとする感覚に襲われた。2014/08/14
コットン
74
『ティファニーで朝食を』とも『冷血』とも違う9編の短篇集。その中でも初めから3編までが特に印象的。『ミリアム』:ある意味一人住まいに付きまとう恐怖、『夜の樹』:逃げても逃げられない感覚『夢を売る女』:夢を売ることの楽しみと怖さ2018/04/12
-
- 電子書籍
- 平成29年版 頻出度順 漢字検定3級 …