内容説明
時を超えて、今なお世界中の親と子に親しまれているアンデルセン童話。この巻には、チューリップそっくりの花から生まれたかわいい女の子が、花の精の王子さまと結ばれるまでをユーモラスに描いた表題作をはじめ、『火うち箱』『小クラウスと大クラウス』『豆つぶの上に寝たお姫さま』『一つの莢から出た五人兄弟』『赤い靴』『氷姫』など、自由な精神と生へのきびしい見方をのぞかせる15編を収める。
著者等紹介
アンデルセン[アンデルセン][Andersen,Hans Christian]
1805‐1875。デンマークのオーデンセに、貧しい靴屋の子として生れる。小学校にもろくに通えなかったが、読書によって文学的指向が育てられた。無一文で首都コペンハーゲンに出、自費出版したユーモラスな旅行記『ホルメン運河からアマーア島東端までの徒歩旅行』が売れて文壇出世作となる。浪漫的名作『即興詩人』で世界に名声が広がり、「人魚姫」を含む第三童話集刊行以降は、近代童話の確立者としても世界に認められた
山室静[ヤマムロシズカ]
1906‐2000。鳥取市生れ。東北大学美学科卒業。「近代文学」の創刊に参画。評論活動のかたわら、北欧文学の研究に力を注ぐ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
SORA
12
アンデルセン童話、意外にシビア。善人が必ず助かるわけでもなく、簡単に命をとられたりする。最初のお話「火うち箱」なんて、主人公の兵隊さんはお金をたくさんくれた魔法使いのおばあさんの首を切ってしまったのに、最終的にほしいものを全て手に入れた。すごいな。きれいごとだけが人生じゃないということなのかな~。2014/08/20
高橋 橘苑
10
文庫本2冊読んだだけだが、誰しもすぐ気付くのは、アンデルセンが単なる童話作家ではないということだ。「氷姫」は子供向けと思えない物語だし、いかにも幸福に終わるのかと思いきや、唐突な悲劇が来て、より深い印象を与えている。「年の話」も印象的。無機的な生活の外側に、不思議な子供や神様しか見えない、もう一つの世界があることを伝えてくれる。ただ、短いが最も良い作品は「一つの莢から生まれた五人兄弟」。O・ヘンリーの名作「最後の一葉」に似ているが、こちらはもっと滑稽感とユーモアがある。2014/11/09
ムー
5
表題作をはじめ氷姫などどれも面白かった。 子供のころに読んでいないので新鮮です。2021/06/15
環奏
3
幼少期に読み親しんでいたアンデルセン童話をもう一度読みたいと思い、読み始めました。改めて読むと、かつては思い至らなかったことがたくさん。『野の白鳥』は今も昔も変わらず好きです。『一つの莢から出た五人兄弟』は最後、ああ…と思わされました。童話の最後は不思議な説得力がありますが、この話もまさにそう。ただ、そういうものだよな…と嘆息。逆に、初見の『「身分が違います」』の最後は、とてもあたたかい気持ちになりました。童話は熟読すると奥が深いですね。あとがき前のゲオルグ・ブランデスの評論も面白かったです。2013/09/29
あみめ
3
小さいころに読んだままになっていたおやゆび姫や赤い靴。改めて読んでみると、童話というよりおやゆび姫は民話に近く、赤い靴は宗教話に近かったのにおどろきました。聞き記したものもあって、季節の神がいるような多神教とアンデルセンが加えたと思われるキリストの一神教が交わったりしていてとてもおもしろかったです。ヒナギクはアンデルセンらしい救いのない話で辛かったですがよかったです。アンデルセンらしくて。やっぱり童話は残酷なところと暗いところがなくちゃ。ご都合主義じゃだめなのです。2010/08/11