感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
nobi
72
“入門” とは言え真髄に迫るド直球の論。第2次大戦後間もない1949年のラジオ講演。収容所送りを直前に免れた自身の体験等に照らしても現実と遊離した内容の講演では済まされない。むしろ崩壊へと向かった世界を前に、哲学する意味を問い直すことでもあったよう。それは揺るぎない安寧の地に辿り着く旅ではないと繰り返し強調。理解し切れなくても気迫漲る言葉の連続に襟を正す思い。意外だったのは「神の思想」とした一講。従来の宗教の神ではない、いっさいが失われたときにただひとつ残る神、という現代人が見直してよいCredoかも。2022/06/11
hit4papa
51
ドイツ実存主義の第一人者(とのこと)による12講からなる哲学講義。タイトルは「哲学入門」ですが、本書を読む前に実存主義とは何か、を抑えておかないと(つまり前提を知らないと)しっくりきません。本書で、全くの初学者が哲学そのものを知りたい、というニーズは満たされないでしょう。昭和29年初版で日本語として難解なのも理解を妨げています。前提を知り精読して初めて腹落ちする類の著作です。一読では上澄みを舐めただけの感覚ですが、神の存在に対する考えについては、興味深いものの、すんなりとは受け入れることは難しいですね。2021/03/08
香取奈保佐
50
誰をも神格化せず、どの思想にも絶対的な地位を与えないことが、哲学的な態度だと理解した。なにかに固執したとき、その目は曇り、視線は偏り、ありのままを認識できなくなる。何かを生涯で貫くのは格好よく見えもするが、場合によっては頑迷さへと転じてしまう。特にその人が排他的になっていたら、なおさらである。2020/09/10
ころこ
45
限界状況を前にして、超越者による導きにより二元論が統合され、自由そのものを超えていき、現存在としての人間は実存的な本来性を獲得する。神の存在証明の中で、照らし出されたものが人間の本質的な存在である。非ヨーロッパ的視線からすると、むしろ、神と言わないキリスト教ではないかということに直ぐに気付きます。厄介なのは、本書が『哲学入門』だということです。では、本書は何なのか。答えは、ザ・哲学であるドイツ観念論とは違うが、ヨーロッパの無意識が哲学に求めているのは神の存在証明である。最初の本としてはお勧めしません。2019/07/08
Nobu A
32
カール・ヤスパース著書初読。発端は先日「100分 de 名著」で取り上げられていたから。1949年のラジオ講演を草薙正夫が翻訳した本書。ながらTV視聴を少々後悔。実際に読むと抽象度が高く、捉えどころない曖昧さに戸惑う。ただし、キーワードの「包括者」は理解が深まった。曖昧さの最大の要因は宗教や倫理と重なる領域の広さと抽象性にあると感じる。デカルト、スピノザ、ヘーゲル等、他の哲学論も読み、対比して捉えると理解が深まるかもと思った。物質主義、競争社会の世の中だからこそ、哲学が心の拠り所になるような気がする。2026/03/26




