内容説明
ケチで冷酷で人間嫌いのがりがり亡者スクルージ老人は、クリスマス・イブの夜、相棒だった老マーレイの亡霊と対面し、翌日からは彼の予言どおりに第一、第二、第三の幽霊に伴われて知人の家を訪問する。炉辺でクリスマスを祝う、貧しいけれど心暖かい人々や、自分の将来の姿を見せられて、さすがのスクルージも心を入れかえた…。文豪が贈る愛と感動のクリスマス・プレゼント。
著者等紹介
ディケンズ[ディケンズ][Dickens,Charles]
1812‐1870。英国ポーツマス郊外の下級官吏の家に生れる。家が貧しかったため十歳から働きに出されるが、独学で勉強を続け新聞記者となる。二十四歳のときに短編集『ボズのスケッチ集』で作家としてスタートし、『オリバー・ツイスト』(1837‐39)でその文名を高める。他にも自伝的作品『デイヴィッド・コパフィールド』(1849‐50)など数々の名作を生んだ国民的作家
村岡花子[ムラオカハナコ]
1893‐1968。山梨県生れ。東洋英和女学院高等科卒。モンゴメリの作品のほか、翻訳が高く評価されている。子どもニュース番組の「ラジオのおばさん」としても親しまれた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
350
アドヴェントに合わせて、積読本から。作家、書名ともに名高いが、読むのは初めて。物語は開始早々からそれ以外には考えられない結末が予想されるし、また事実その通りに展開していく。サスペンスなら、これほどつまらないものもないのだが、ここではむしろ予定調和の円環を結ぶと考えるべきだろう。クリスマスは、やはり大いなる祝祭なのだから。また、物語の舞台となった、煤煙と霧に包まれた19世紀のロンドンの街の光景をうかがうことができるし、さらには、主人公のスクルージをはじめとした人物造形にもイギリスらしさが横溢する作品。2012/12/19
のっち♬
261
クリスマスイブの夜、冷酷無慈悲な商人は超自然現象により過去・現在・未来を旅する。一見御伽噺的なハートウォーミングな話だが、お金も時間も切り詰めて他人のことを一切構わない主人公を通して現代都市が抱えた貧富格差や労働問題を抉った内容。構成が洗練されており、押しつけ感のないユーモア溢れる語り口、独創性豊かな幽霊、(とりわけ現在編の)いきいきとした人物描写は著者ならでは。「病気や悲しみは伝染するが、その一方で笑いや喜びもとても移りやすい」—余裕をなくし、人を思いやる気持ちを忘れた現代人の心の奥底を揺り動かす名作。2017/09/11
zero1
252
幸福って何?この作品を勘違いしている人が結構いるけど、試されているのはスクルージではない。読者自身だ。金持ちだがケチでエゴイストなスクルージ。彼の前にマーレイの幽霊が現れる。死んでからも鎖で苦しめられる未来から彼を救うため、三人の幽霊に会う。翻訳は「赤毛のアン」で知られる村岡花子。100以上、版を重ねているロングセラー。ディケンズは「オリバーツイスト」で知られた作家。彼の経験が人物描写によく出ている。チキンやケーキもいいけど、読書人ならクリスマス前に本書を読んだらどうだろう。何度でも再読したくなる一冊。2018/12/22
おしゃべりメガネ
240
クリスマスの定番中の定番作品を初めて読みましたが、正直感想は「ごめんなさい」でした・・・。どうしてか、イマイチ集中して物語に入っていけない自分がいて、偏屈爺さんのスクルージが相棒だったマーレイ老人の手引きにより、あらゆる‘姿’や‘世界’を見せられるコトにより改心していくのですが、その過程も彼の眼に映る光景もイマイチ、ピンとこなくぼんやりしてしまっていて、感動が伝わりにくかったです。しっかりとタイミングがドンピシャで読みこめば、間違いなく素晴らしい作品なのでしょうが、自分に合わなかったというコトですね。2015/12/25
Miyoshi Hirotaka
208
金貸しはシェークスピアの時代からイギリス文学の憎まれ役。にもかかわらず、周囲から蛇蝎の如く忌み嫌われる冷酷無比な金の亡者にも立ち直る機会を与えるのがクリスマス。商売仲間の亡霊が現れ、3人の幽霊により過去、現在、未来を見せられ、生き方を変える物語だが、実は、主人公の態度の他に変わったものは何もなかった。それだからこそすべてが変わった。理屈抜きで喜びに満たされ、目に見えないものの存在や神の祝福を信じ、信仰と信頼を抱くのがクリスマス。だからこそクリスマスは愛と希望で世界が満たされる。クリスマスはやはり特別な日。2016/12/22