出版社内容情報
第一次大戦前、ハンブルク生れの青年ハンス・カストルプはスイス高原ダヴォスのサナトリウムで療養生活を送る。無垢な青年が、ロシア婦人ショーシャを愛し、理性と道徳に絶対の信頼を置く民主主義者セテムブリーニ、独裁によって神の国をうち樹てようとする虚無主義者ナフタ等と知り合い自己を形成してゆく過程を描き、“人間”と“人生”の真相を追究したドイツ教養小説の大作。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
107
NHK100分de名著で取り上げられていたドイツ文学の古典。1910年代結核は不治の病であり、サナトリウムで患者は隔離され、1日5回の食事と安静療養が中心であった。主人公のハンス・カストルプはいとこで療養中のヨーアヒム・ツィームセンを3週間の予定でハンブルグからスイス・ダヴォースまで列車で訪れる。平地とは異なる時間の感覚に慣れてくる頃、彼もまた発症しいとこと同じく患者となって療養することになる。イタリア人の人文主義者セテムブリーニとの会話、ロシア人ショーシャ夫人への恋慕、ベーレンス顧問官との医学と死など。2024/06/24
扉のこちら側
84
初読。2015年1122冊め。【71/G1000】苦手な仏文学を続けて読んでいたので、久しぶりに独文学に触れるとなんだか安心感がある。まさにBildungsroman。驚くような物語の波はないのだが、淡々と進むサナトリウムでの日常と思考に引き込まれる。結核が死の病だったころの、日常の影にある病を描く上巻。下巻は戦争にスポットがあたるのだろう。【第6回G1000チャレンジ】2015/11/08
のっち♬
78
思考、議論、葛藤、恋愛、発散されることなく蓄積する主人公のエネルギーは継続する発熱として滲み出る。著者ならではの精密な人間観察が全編にわたって冴え渡る教養小説。純粋無垢が故に人生の厄介息子な主人公に次々と影響を与えては去ってゆく登場人物との対話には、著者の経験や考察も多分に投影されているのだろう。ハンスは傍観者から徐々に本当の意味での主人公へと肉付けされてゆくが、ページに比例して本書は読者まで哲学と時間の魔力で思考と感覚を翻弄する。中でもショーシャ夫人への愛欲と人文主義者セテムブリーニの存在感は印象的。2019/12/17
びす男
73
山の上の療養施設にいとこを訪ねた主人公が、そこに流れる独特の時間と雰囲気に染まり、ずるずると帰国を延ばしていく。とにかく長くて、大きな出来事も起こらないので非常に読みにくい。ところどころ惹きつけられる場面があるが、始終真面目に読んでいては終えることができないだろう。一番気になるのは、この小説がどういう「筋」を辿るのか、ということである。狭い「魔の山」というコミュニティに主人公がとどまる限り、そこで紡がれる物語も大きくなり得ないと思われる。下巻に入り、どんな「線」を辿っていくのか気になる。後で書評書きます。2015/03/26
Gotoran
55
20世紀初頭(第一次世界大戦前)に、純真無垢な青年(ハンス・カストルプ)が、スイス・アルプスのサナトリアム(ベルクホーフ)での結核療養生活で知り合う人々との交流を通して、人としての自己成長を果たして行く物語。特に、いとこのヨアヒム・ツィームセン、ベーレンス顧問官、人文主義者のセテムブリーニとの関係で、自己の在り方を確認しつつ、自己に目覚める過程の巧みな描写が素晴らしい。本書(上)は、ワルブルギス(滞在7ヵ月後の謝肉祭)の夜にハンスがロシア人のショーシャ夫人に愛を告白するまで。2012/07/16
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