感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
149
純情な青年によって真実の愛に目覚めた美貌の娼婦は彼の将来のために自らの恋を犠牲にする。娼婦につきまとう誤解や偏見などを通して社会の普遍的なモラルの問題を扱った代表作。全体を覆う人間味豊かな情緒は著者の多感さを雄弁に物語っている。恋によるヒロインの変貌ぶりや駆け引きは魅力的だし、プリュタンスの忠告やアルマンの父親の説得はずっしりとした重みがあり、話に社会性と深みを与えている。社会の犠牲となって不遇に死んでいくヒロインの悲痛な手紙からは、「気高い心を持つ不幸な人々があげる祈り」への著者の深い同情が感じられた。2021/03/19
夜間飛行
109
男に貢がせた品を所狭しと飾るマルグリットのような女性は世間から嫌われる。たまさか彼女が真剣に人を愛しても社会は決して許さない。初めの方でアルマンが墓を暴き、腐敗した恋人の顔を見つめる場面があるが、これは恐ろしい謎かけで、最後まで読むとアルマンの悲痛な表情の意味がわかるのだ。社会の側に立つ彼は、自分への愛を貫こうとして身を引いた「椿姫」を自分の手で死に追いやったのである。後ろに広がる墓穴は彼を裁く死の法廷であろうか。恋人の骸の前に立ち尽くすしかない惨めな男を、マルグリットはそれでも優しく抱擁するのか。ああ。2015/09/27
nakanaka
94
娼婦マルグリッドと青年アルマンの愛の物語。話はマルグリッドの死後、アルマンが彼女との思い出を作者に語るような形で進む。「椿姫」の名前の由来が白椿と赤椿を月の物に合わせて身に着けていたことに由来するという。作者・小デュマの実際の体験が基になったというからこの椿の話も本当なのかも。娼婦に対する世間の目や彼女たちの心情を率直に描いているように思う。また、二人の愛は本物だったが娼婦に溺れているようにしか見えないアルマンの父の想いもまた痛いほど理解できる。あまり何も考えず手に取ったが紛れもなく名作だった。2020/05/28
zero1
93
オペラで知られる古典的な恋愛小説だが、現在にも通じる。娼婦マルグリットが亡くなり、遺品が競売に。その中に小説「マノン・レスコー」があった。高値で競り落とした男の所にアルマンという青年が現れる。そして悲しい思い出を語る。もし、私がアルマンなら、彼の父ならどうしたか?男の嫉妬と差別が現実にあることを思い知らされる。芥川賞受賞作「赤頭巾ちゃん気をつけて」(庄司薫)で主人公がこの作品を読み感動したということで再読。私も18歳の時に読み、大泣きした。この感動を忘れたら、私の感受性は失われたと思っていい。2019/01/10
財布にジャック
73
有名な椿姫を初めて読みました。椿姫ってこんなにも悲しいお話だったのですね。マルグリットの気持ちも解らなくもないですが、もうちょっとなんとかならなかったのかと読んでいてイライラしました。こんな感想を書く私には、この小説の真の良さが理解できていないのかもしれません。それでも、愛ゆえの自己犠牲には胸が熱くなりました。2013/10/17
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