内容説明
マンダレーで開かれた豪華な仮装舞踏会の翌日、海底から発見されたレベッカのヨット。キャビンには、一年以上前に葬られたはずの彼女の死体があった―。混乱するわたしにマキシムが告げた、恐ろしい真実。変わらぬ愛を確信し、彼を守る決意を固めるわたし。だが、検死審問ののちに、マキシムすら知らなかったレベッカの秘密が明らかになっていく。魅惑のサスペンス、衝撃の結末。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
472
下巻では物語展開の速度が一気に上がり、読者にとっても語り手の「わたし」にとっても思いもよらぬ展開相を見せ、そこからは2転3転しつつ怒涛の結末を迎えることになる。そして、マンダレーの終末は物語の冒頭に回帰するのだが、それはけっして円環を結ばない。廃園となったマンダレーは、それゆえにこそ失われた永遠の時を彷徨い続けるのだ。すべてが終わって再び冒頭を読むと、そこでは「わたしたち」と語られていたことに改めて気づく。にもかかわらず、すべては失われたのであり、「わたし」の回想は苦くも暗いロマネスクの中に溶解する。2016/01/22
ケイ
132
途中までは怪奇・幻想小説に思えるが、すべては故あっての事だったのだ。恐怖との対峙からか、主人公の、女性として、また人間としての成長が著しい。最後に仕掛けをもってくるための壮大な仕掛けだったのか。映像もあるようだが、そちらの方が、主人公の受ける恐怖をうまく表現できるのではないかと思った。2015/07/16
青蓮
115
レベッカの「亡霊」に付き纏われながらの日々。しかしレベッカのヨットが引き揚げられたことによって、衝撃的な真相が明らかになり「わたし」は彼女の「亡霊」から解放され、マキシムとの間に漸く確かな愛が芽生える。破滅との隣合わせの愛がーーレベッカの真の姿、マキシムの罪、全てを受け入れ強かになった「わたし」、検死審問の行方。加速する物語の展開にページを捲る手が止まりませんでした。ラストは意外とあっさりしていますが、また上巻の冒頭へと戻りたくなります。全ては消え失せた。マンダレーは秘められた真実と共に忘却の彼方へ。2018/01/30
アン
112
不運に見舞われた舞踏会、ダンヴァーズ夫人の激しい咆吼、昏い水面に横たわる謎の死体…。レベッカの幽霊のような影に恐怖と嫌悪を募らせた主人公が驚くべき真実を知り、次第に変貌していく過程は力強くもありますが、何処か寂し気に映ります。それは優美さと静謐さに包まれながら不穏な空気が漂っていたマンダレーの世界、レベッカの存在から逃れることは決して出来ないからでしょうか。不思議な冒頭から一気に惹きつけられ、心が凍りつくような数々の場面と詩情豊かな情景が浮かび、サスペンスに満ちた展開が素晴らしいゴシックロマンです。 2019/12/07
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
109
仮装舞踏会の翌日、海底から発見されたレベッカのヨット。船室には一体の死体があった。混乱する『わたし』に夫が告げた真相は、恐ろしいが故に『わたし』の心を鎮め、世間知らずの少女は一夜にして大人の女性になった……。静かな上巻から物語の様相は一変し、急展開を繰り返しながらクライマックスに突き進んでいく。すべてはレベッカによって巧妙に仕組まれていたのだ。最後まで名前を与えられず、『わたし』のままだった語り部。映像的なイマジネーションをかき立てられる最後の一文。実に実に鮮やか。下巻には恩田陸さんの熱烈レビューを収録。2016/01/10