内容説明
アルコールが一滴もないはずの閉鎖病棟で泥酔を繰り返す人気小説家。キックボクシングのタイトルマッチ、勝利の瞬間にリングで死亡した王者。かたや厳重な警備の病院で、こなた千人以上の観客が見守る中で。まるで神様が魔法を使ったかのような奇妙な「密室」事件、その陰に隠れた思いもよらぬ「病」とは?天才女医・天久鷹央が不可能犯罪に挑む。現役医師による本格医療ミステリ!
著者等紹介
知念実希人[チネンミキト]
1978(昭和53)年、沖縄県生れ。東京慈恵会医科大学卒業。2004(平成16)年から医師として勤務。’11年、「レゾン・デートル」で島田荘司選ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞。’12年、同作を『誰がための刃』と改題し、デビュー。’18年、『崩れる脳を抱きしめて』で広島本大賞、沖縄書店大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
そる
195
短編2作みたいな感じだけど推理カルテじゃなく事件カルテ。作家のアルコール依存症と、キックボクサーの突然死。どちらも好きでやっている職業だけど、仕事になると大変なことってある。心折れる時も上手くいかない時もある。そんな中でも諦めずにがんばる人は素敵。応援したくなるし慕い続けるね。「「多くの読者の方は、天久先生と同じように楽しんでくださっています。(略)それを見て、主人はひどく傷つきました。百の褒め言葉より、一つの悪評が気になってしまう。人間とはそういうものなんです。特に、主人のような芸術家肌の繊細な人は」」2024/07/22
hiro
183
知念さんは多作の作家なので、この本で29冊を読み終えたが、やはりタカタカコンビのこのシリーズが一番好きだ。最近は二人だけではなく、舞を加えたトリオ漫才になっているが、これがまた面白い。題名が事件カルテの場合は長編だと思っていたが、今回はカルテ1、2の2編収録。「バッカスの病室」は題名のとおり、中毒患者の話。アルコール依存症の話は以前にもあったが、そろそろネタ切れかと少し心配になる。つづく「神のハンマー」のリング上での衆人環境の殺人事件では、小鳥先生の診断医としての成長を鷹央先生といっしょに楽しめた。2020/09/05
mariya926
172
作家さんのアルコール中毒は切なくなります。SNSは何とでも書けるので読まないで欲しいです。知念さんが読メに出没してると聞いたことがありますが(笑)読メに来ても大丈夫なメンタルなら大丈夫なのでしょう。ボクサーがチャンピオンになった瞬間に倒れて亡くなり、妻が夫は殺されると言っていたのも切ないですね。今回は中編2つですが、両方とも切なかったです。このシリーズネタ切れしないのが凄いです。というか11冊目なのに赴任してまだ1年って…1か月に何度事件が起こっているのか…そんな病院怖すぎます(笑)2020/11/26
Makoto Yamamoto
164
今回は2編からなる。 昔から密室と言われている状況下での起こる事件題材に。『バッカスの病室』は酒が題材に。 ひょっとして著者も登場している人気作家のような悩みを持っているのかと思ってしまった。 『神のハンマー』はキックボクサーがチャンピオンとなって、ベルトを締めたとたん倒れてしまい、そのまま帰らぬ人に。 いずれも医者ならでは視点で楽しませてくれた。 天久鷹央、鴻池、小鳥遊のコンビは楽しい。2021/02/08
昼寝ねこ
137
知念実希人さんの医療系ミステリで、文庫で20冊近く刊行されている人気シリーズ。初期の作品は読了済みなので未読の作品を拾っていく。今作は流行作家のアルコール依存性と、キックボクサーの試合での突然死の謎を解く。毎度のことながら鷹央先生のキャラが立っているし部下の小鳥先生との掛け合いが笑える。研修医の鴻ノ池先生や精神科の墨田部長もイイ感じでからんでくる安定の面白さだ。ライトミステリーなので特に医学知識がなくても読み進める。倫理観だのリアリティだのと難しいことを考えずにエンタメとして楽しめる作品だ。2025/03/21