出版社内容情報
奄美の海で隻眼の大鷲が語る、この世の終わりを待つ理由。それは甘美な狂おしさに満ちた、兄妹の禁じられた恋物語だった――。
この世の終わりならふたりの全てが許される。奄美の海を漂う少女の元に、隻眼の大鷲が舞い降り、語り始めたある兄妹の物語。親を亡くし、一生を下働きで終える宿命の少年フィエクサと少女サネン。二人は「兄妹」を誓い、寄り添い合って成長したが、いつしかフィエクサはサネンを妹以上に深く愛し始める。人の道と熱い想いの間に苦しむ二人の結末は――。南島の濃密な空気と甘美な狂おしさに満ちた禁断の恋物語、待望の文庫化。
内容説明
奄美の海を漂う少女の元に、隻眼の大鷲が舞い降り、語り始めたある兄妹の物語。親を亡くし、一生を下働きで終える宿命の少年フィエクサと少女サネン。二人は「兄妹」を誓い、寄り添い合って成長したが、いつしかフィエクサはサネンを妹以上に深く愛し始める。人の道と熱い想いの間に苦しむ二人の結末は―。南島の濃密な空気と甘美な狂おしさに満ちた禁断の恋物語、待望の文庫化。日本ファンタジーノベル大賞大賞受賞作。
著者等紹介
遠田潤子[トオダジュンコ]
1966(昭和41)年、大阪府生まれ。関西大学文学部独逸文学科卒業。2009(平成21)年、『月桃夜』で日本ファンタジーノベル大賞の大賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あさひ@WAKABA NO MIDORI TO...
107
遠田作品2作目は、デビュー作にしてファンタジーチックな月桃夜。江戸時代、薩摩の支配下にあった島の身分制度の底辺で健気にも懸命に生きた兄妹の切なくも甘美な想いを、南国奄美を舞台に熱く描ききる。『雪の鉄樹』とはまるっきり違う作風ではあるものの、強烈に印象的な作品を連発するところは作者の実力か。更に別の作品も追っていきたいです。2020/03/20
巨峰
105
薩摩藩の圧政に苦しむ奄美の人々。人々は家を失い、田畑を奪われ奴隷になった。後で人気作家となった遠田さんのデビュー作。時間はかかったけど、後半は一気に読んだ。禁断の愛には届かないもののお互いを想う兄と妹の濃厚な雰囲気が時空を超えて空を駆け巡る。少年少女向きの文庫として狭い範囲の読者層しか届かないのはもったいないなかなかの作品です。2017/10/18
優希
97
ひたすら美しい物語でした。血が繋がらないながらも兄妹の契りを交わしたフェウクとサネン。時を共にしていくうちにお互いの中に兄妹の関係以上の想いが生まれてくるのが哀しさと切なさを感じさせます。お互いが深く愛し合い、幸せを願ったがために、人の道と心の想いの間で苦しむのが、もうこの2人は兄妹ではいられないと思わずにはいられませんでした。そして同時に茉莉花と兄の禁断の愛も甘美な香りを漂わせます。間違いとは言い切れず、ただ許されないというだけなのですが、狂おしくてたまらない。そんな濃密さに惹かれました。2016/11/02
ふじさん
91
日本ファンタジーノベル大賞受賞作で遠田潤子のデビュー作。死を覚悟して海に漂う茉莉香と空を彷徨う大鷹が語り合うことで、話は展開する。200年前の奄美を舞台に、過酷な階級社会に生きる許されぬ愛を望んだフィエクサとサネンの儚くも哀しい恋物語。茉莉香と大鷹の二人の過酷な人生が微妙に絡まり、最後には仄かな光が指す。遠田潤子のその後の作品とは趣きを異にするが、主人公たちが、置かれている環境に贖いながらも、その運命を受け入れ逞しく生きようとする姿には拍手を送りたくなった。 2022/02/12
あも
79
遠田劇場はデビュー作にしてその重さを見せつけてくれた。奄美の海にカヤックで独り死を待つ少女の元に大鷲が舞い降り昔語り始めるという幻世と現世の狭間のような話。幻想のヴェールで苦い現実に靄をかけてくれるかと思いきや、大鷲の語るは地に這い泥に塗れる物語。江戸時代、薩摩藩に搾取され人々が厳しい身分制度に縛られていた奄美の島に、ヤンチュと呼ばれた奴隷身分のフィエクサとサネンの兄妹がいた。起き上がることの叶わない重い荷を背負いながら互いを想い合う。しかし人は間違い、罪を犯す。大鷲の待ち望む世界の終わりはきっと優しい。2020/02/12