内容説明
怖い顔した仁王様も慈悲深い微笑みの観音様も可愛らしいお地蔵様もみんな仏像には違いありません。どうして仏像は見るものを吸い込んでしまう豊かな表情をしているのでしょう。なぜ仏像に手を合わせると優しい気持ちになれるのでしょう。僧侶であり、現代最高の仏師でもある著者が仏像のすべてをやさしく解説。
目次
幸せな仏像 不幸せな仏像
旅に出た仏像
気合で彫った不動さん
無知な住職
宗派の変遷と仏像
蘇った瀕死の神像
仏縁をつなげる破損仏
仏像の衣の謎
仏像の御魂を抜く話
済度仏のこと〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
三平
12
私が最も好きな寺の一つ、愛宕念仏寺の先代住職であり、日本美術院所属の伝説の仏像修復家として名を残した西村公朝さんが語る仏像との縁のはなし。細心の注意を持って文化財に相対する技術者としての視点を持ちながら、仏像が持つ不可思議に揺り動かされていく体験にひきつけられる。 仏像が本来の力を持つ為の例えが面白い。放送局(仏)が電波を各家庭のTV(仏像)に送っても、プラグをコンセントに入れ(開眼式)、スイッチ(信者の信心)を押さなければ映像が出ないと同じとのこと。2017/03/08
Mayuko
5
素晴らしい本だった。これは自分で買って何度でも読み返したい。ものにも心はあり、ましてや仏像には慈悲がある。2014/12/14
あにこ
4
仏像をテレビ受像機に喩えられたのが、腑に落ちた。プラグをコンセントに差し、いつでも本局からの映像(=ホトケ)が映る状態にセットするのが開眼法要にあたる。仏像そのものはただの受像機で、御魂が入っていなければ空の器だ。■仏像は拝まれてこそ、とお師匠さんはよく言う。造形が多少まずくとも、ボロボロであろうとも、拝まれ続けた仏像は尊い。その尊さは造形の巧拙を超えたところにある。■師が昔、「お前、これが仏だと思うのかい。これは、ただの木や」とおっしゃったのは、ただの皮肉ではなくて、そういう真意も含まれていたのだろう。2020/09/22
あかつき
4
藝大彫刻科出身の仏像修理士かつ僧侶でいらっしゃる方の回顧録のような本。 度々仰っている"仏縁"は本当に存在するのだ、と私でさえ自ずと思うほか、仏教や仏像に関して究められた方の在り方のようなものも感じさせられる。 個人的には運慶と快慶の違いが勉強になった。 一冊を通して非常に興味深い本だった。2020/08/25
bittersweet symphony
4
著者は美術院国宝修理所で仏像修理を半世紀にわたって行っている方で、京都の愛宕念仏寺の住職でもあります。著書も多くものされていますが、自分はこれが初めてです(芸術新潮で書かれたものは読んだことがあるかもしれません)。この本も芸術新潮に連載されていたものを纏めたもので、国宝修理所などでおこなった実際の修理の話から、仏像そのものについて・岡倉天心から始まる古美術保護の流れに関する話・著者の仏縁や経歴などが語られます。2005/12/23