内容説明
これはスゴい、そこまで書くかと右翼が驚き、左翼も呆れた前代未聞の「天皇小説」。天皇とは、日本人にとってどんな存在なのか。われわれはなぜ、これほど天皇にこだわるのか。監獄、右翼左翼、精神科病院、北朝鮮と、さまざまな「非日常」のフィルターを通して見てみたら―。獄中で執筆され、獄中で新日本文学賞を受賞したデビュー作にして超問題作、大幅加筆を経て、文庫版で復活。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
てふてふこ
21
天皇陛下。精神病患者も誰でも日本の象徴として脳内に居座り、集団真理で天皇万歳をやった時の恍惚感。同じ人間なのにね。右翼も左翼も、現社会で何を求めてるの。政治を語る上で天皇陛下は別としたい。象徴・太陽のお方だから。でも、日本がぼろぼろになって、救世主を!の存在が天皇陛下であってほしい。同じ人間だけど、あくまで神々しく。2015/11/12
TARO
19
小説のようでいて小説を読むようには読めなかった。啓蒙書、教養書のような体裁の中に登場人物が嵌め込まれている印象があり、物語的な没入感は得られず。ただ 天才的な精神障害者が、天皇として現れ、周囲の精神障害者たちが癒されるという話しは面白かった。宮台真司の解説にある天皇のモードが興味深い。愛のモードのように天皇のモードが成り立つ。何処までも天皇ごっこのごっこは外せず。愛のモードと等価となっている現実。天皇教の中で亡くなっていった人達がいたということは 今となっては歴史的な想像の中でしか無い。2024/07/05
ぱんぺろ
13
聞きしにまさる妖書、当時えらく話題になっていたのだが文庫版のポップな装丁で食わず嫌いしていた。頁をうずめる奇文・怪文の嵐が吹くあたりさながら異界文書という風情は、小説技巧のみに長けた桃太郎飴的展開なんぞ端からクソクラエ、ひたすら己が表現を突っ走り続ける姿勢には、ある種の清々しさまで感じることも可能だ。部分的に倒錯しているかの文言も実はシニカルに醒めた現場表現であり、総じてこれは一種の過去声明文であろう。要らない註釈にわざわざちいさな段を組んでまでつけるところがまた可愛いい。実におもしろい読書体験だった2016/06/02
半木 糺
10
「天皇」という存在について、ここまで考察を深めたモノは(文芸・批評問わず)他に存在しないのではないか。右翼・左翼を問わず、あらゆる思想・行動が「天皇」の元に統合されていく。マルクシストもファシストも「可愛い可愛い陛下の赤子」になる。天皇とは国家の象徴なのではなく、日本列島に住む人々を「日本人」に変化させる媒介なのであろう。本書は見沢の12年の獄中生活の中で生み出された奇書である。その誕生には見沢の母の存在が欠かせなかった。その奇異な誕生経緯も含めて、本書はまさに日本文学史上の忌み子であり、徒花でもあった。2012/05/13
フクシマ
7
再読。俺が右翼・左翼に興味を持つきっかけになった小説。天皇(天皇制?)が持つ魅力・魔力を描いている。第2章が好きだ。第2章はテロの話。テロを実行しようとする右翼の青年とテロの対象の天皇制打倒に執念を燃やす左翼の老政治家、各々のそういった思想に至った人生の過程が交互に描かれる。互いの情念が育まれていく様が好きだ。2014/03/11
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