内容説明
花と月とへの憧憬、子供らとの無垢な戯れ、夢遊の至純、浄身の飽くなき実践。―大患を得て自らの死と対峙し続ける体験を持った一人の文学者が、敬愛する四人の先人の、隠者の系譜につらなる詩歌と思想とに深く分け入り、死生観を味読する。その時、未知の死と不可知の死後とが、今・ここにおける生と相結んで、現世浄土を求める地上一寸の声に結晶してゆく…。読売文学賞受賞。
目次
花月西行
遊戯良寛
顕夢明恵
透脱道元
地球浄土
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
獺祭魚の食客@鯨鯢
52
京大医学部卒の医師であるより、仏教に根ざし生きることへの愛惜を詠んだ歌人として生きた。幾度も大病を患い「いま、ここ」を精一杯生きることを終生思い続けた。 夏目漱石が「修善寺の大患」で「世間との和解」を遂げたように、西行、良寛、明恵、道元ら仏教者と対話しながら、この世との折り合いこそ大切であると考えた。 明日死ぬかもしれないということとは、コロナウイルスで死ぬかもしれないということである。つまり死後のあの世(彼岸)での極楽浄土を夢見るより、今日の生を充足させることこそが真の幸せなのである。 2021/04/08
一穂青燈
3
20代の頃、「もっと大人になってから読もう」と取っておいた一冊。大人になった、かなぁ。圧倒的に教養が足りません。そして、うすうす気がついてはいたけれど、リフレインにものすごく弱いです。いつかまた、ワーズワースを読みたくなりました。2014/08/07
うろたんし
2
歌の話がもっとたくさんあるかと思っていたんだけど、上田三四二の主題はそんなところにはなかったみたい。冒頭にあるとおり、死について、延いては生について、一貫して書かれていた。そこから、生と死とを包含する、地球、宇宙に話が進むのは当然の帰結か。終盤に、著者の口から(手から?)唐木順三の名前が出てきたのには驚いた。中世の文学を少し前に注文したのが届いたところだったから。やはり、読んでいて、知的興味を擽られる文章は、ありがたい。2013/09/03
はるい
2
正法眼蔵は難解で、私などには道元禅師の言葉は一生理解できないと思うが、「存在は相互に切断されながらその時間の微小断片、すなわち刹那においてなおよく世界たりえている。仏法によって、仏性において、世界たりえているのである」という上田氏の文章で、すっと何かが腑に落ちた気がした。義母の最晩年を間近に見て、死とは何かを改めて考えるようになってから初めて、少しではあるけどヒントが見えた。令我念過去未来現在いく千万なりとも、今時なり、而今なり。2013/05/20
shoyo
0
西行の死生観について、花月に憬れ心が浮遊した時に彼は現世浄土を生きていたのではないか、彼にとって死はその延長ではないかと。西行が優れた歌人であるが所以を歌に心得のない私でも理解できた気がした。また道元の章では、人の一生は太陽系の時間単位では刹那である事、原子単位だと体の中が宇宙であり人は只管だと述べており、其は以前から私も強く感じていた事だわ、と興奮気味に読んだ。私が只管であり(道元の清浄へのこだわりはここが理由と解釈)私という宇宙を包む私は仏法そのものである事。時々で捉え方が変わりそうでまた読み返したい2025/06/26
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