内容説明
本能寺で信長が斃れ、天下は秀吉が簒奪した。大久保一族では彦左衛門が成長し、忠世・忠佐の奪戦を支え続けた。上田攻めでは真田昌幸、大坂の陣では幸村の深謀に苦戦しつつも彼らの忠義は一瞬たりとも揺るがなかった。やがて、家康は天下を掌握し、忠世・忠佐とも大名となるが…。大久保一族の衷心と、家康の絶望的な冷淡。主従の絆の彼方にある深い闇を描く歴史雄編堂々の完結。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
87
豊臣秀吉が権力を握り、その後中心は大久保一族で上田城での戦いや大阪の陣に参戦します。また大名になりますが、徳川家臣団の権力闘争や家康の老化とともに大久保一族への怨恨が募り、知行を取り上げられ三河に蟄居することになります。三河物語を書いてその後、徳川2代目3代目も目を通すさまが描かれます。宮城谷さんもよく読みこんでこの物語を完成させてくれました。今まで知らないことばかりでした。2015/07/20
アイゼナハ@灯れ松明の火
36
下巻は、信州攻略から真田昌幸が籠もる上田攻め、その後、家康と秀吉の和議、北条征伐から関東転封と物語は続きます。家康は上田攻めの頃から、大久保一門への風当たりを強めつつあったのね。信康の死に関わったことが大久保一門凋落の遠因とされていますが、個人的には、自分の死後の事まで考えた家康に、一門としての結束力の強さを忌避されたのではという気がしました。勿論、理不尽な話ですが、平助(大久保彦佐衛門)をお咎めなしにしたとこに、家康の微かな謝罪の念と甘えを感じないでもない。「三河武士とはそういうものであろうよ」とかね。2011/04/01
kk
27
照る日・曇る日、陰日向なく全てを尽して徳川を支え続けてきた大久保一族。天下の静謐を見た後の一族の境遇には、読む者の胸に様々な思いを抱かせるものがあります。政治家としての家康の怖さ、権力というものの恐ろしさ、そして人として拠るべきものの在り処など。「天道は是が非か」という気分にもなるけれど、それを超えた、人としての在り方の美しさについても考えさせられてしまいました。2020/03/30
ホームズ
25
面白かった(笑)上田攻めが鳥居元忠、平岩吉親との対立で失敗。信康の切腹がかなり尾を引いてる感じが凄いな。酒井忠次を家康が恨んでいたって話は聞いてたけど大久保家も恨まれてたんですね。忠隣失脚の場面は知ってはいるけど悲しいな。それで終わらず結末は気持ちよく終われて良かった(笑)秀忠と家光のエピソードが良かったな(笑)次は『風は山河より』を読もうかな(笑)2012/09/21
春
18
感動の読了。三河出身の宮城谷昌光だからこそ書ける作品だったと思う。やがて猜疑心の塊になっていく家康を見る彦左衛門の目が、憎しみをひたすらおびるのではなく、ただただ無欲で透き通っていて素敵。また、上田攻めでの徳川の負け戦は、真田という強敵というよりも、徳川陣のメンバーのまずさが大きな要因というのが新鮮でした。2013/10/14
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