内容説明
あなたと私、二人きりですべてをわかちあった秘密の時間―。数奇な生い立ちをもつ渚と玲奈。幼くして知り、別離を経てめぐり合い、もう離れられないと悟った二人は、手を取り合って許されざる官能に身を投げ出す。無垢すぎる魂が引き寄せる悲劇。狂おしくも甘やかな死の予感言葉と写真の奇跡的な融合が小説を超える世界を生み出す。一篇の映画にも似たコラボレーション・ブック。
著者等紹介
小池真理子[コイケマリコ]
1952(昭和27)年、東京生れ。’96(平成8)年『恋』で直木賞受賞
ハナブサリュウ[ハナブサリュウ]
1949(昭和24)年、大阪生れ。写真家。パリと東京を拠点に活動(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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けぴ
53
渚と玲奈。血縁は無いいとこの二人の淫靡なストーリーが淡々と進行する。美しいモノクロ写真が雰囲気を盛り上げる。ラストの一文が光る。「わたしは換気扇の中におとなしく吸い込まれていく煙のように、無抵抗のまま元の生活に舞い戻った。」(P137) 小池真理子さんならではの作品。2022/04/10
ぐうぐう
30
イノセント。それは純真であるがゆえに罪深くもある。理性はイノセントを避ける。それが危うく、罪深いことを知っているから。けれど、純真だと思えるほどの強い愛は、だからこそ抑えようのない欲情は、軽々と理性を超え、イノセントに身を委ねさせる。官能が、さらに二人を世俗から遠ざけ、もはや戻れなくなる。しかし、二人は知っているのだ。無垢の世界が長くはないことを。いつか必ず終わりが来ることを。その時、罪を犯した二人には罰が降ることも。知っているから、二人は溺れるのだ。この刹那に。イノセントに。(つづく)2021/09/14
シュラフ
26
秀作なのか、駄作なのか・・・。好きか、嫌いか・・・。ストーリー展開があまりに意味不明でなんとも判断をつけがたい。まぁ、小池真理子らしいといえば小池真理子らしい作品である。小池真理子は雰囲気で読ませる作家なのかもしれない。ハナブサリョウの写真とはうまくマッチはしている。ストーリー展開の現実感のなさが、西洋的庭園と西洋彫像という写真とこれ以上なくかみ合っているのがよい。「無垢なまなざしで世界を見つめるという豊饒の時間・・・」。こんな永遠の愛を一瞬でも味わうということは至福の時というべきなのだろうか。2015/09/18
yoko**
8
写真の存在が物語をさらに官能的で美しいものへと昇華させ、男女の思いに正当性をもたせる。2008/01/11
おおた
4
描写が瑞々しくてよかった。文章も写真も読むごとに違う心情を見せてくれるようで何度も読み返したいと思う2020/06/05