内容説明
都内に高級クラブ等を所有する伊勢商事社長、36歳の伊勢孝昭は暴力団に会社の経営を任されていた。彼には殺人の過去があったが、事件は迷宮入りしていた。しかし、孤児院時代の親友が犯した新たな殺人が、その過去を呼びおこし、警視庁・佐古警部が捜査に当たる。そんな折、伊勢はヤクザ同士の抗争に巻き込まれて―。天才音楽家の妹と友人を同時に守るため、男は最後の賭に出た。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kuma
24
5回目くらいの再読。読む度に白川氏の人生観を強く感じる。カネでなく恋愛でなく、自分だけが持つ大切なモノ、人にすべてを捧げる。他人から見てそれがガラクタでも。2021/02/12
ヨーコ・オクダ
22
これまたカッコええわ。いつもは警察小説好きで、刑事さんに事件を解決してもらうのが楽しみなんやけど、コレに関しては「ちょっと…主人公のこと、そっとしといたってよー」なんて思たり。主人公がまっすぐ過ぎ。ホンマええ奴やのに…実の父親がアイツでなければ、後の不幸は何一つ起こらなかったやろうにー。人生のそれぞれの段階で縁ができた妹、友人たちを守るため、危ない道を選択する。主人公のことを息子のように思て見守ってきた男たちのアシストも最後はむなしく。あぁ、切ないわー。2016/08/30
Tetchy
21
物語を彩るキャラクターのなんと濃密なことか。どこかで読んだような、借りてきたような人物ではなく、生活から人生の道程までしっかりと顔の皺まで浮かびそうなくらい書き込まれている。処女作でも感じたがやはりこの人は“世界を知る人”なのだろう。この人でないと書けない雰囲気が行間から立ち上ってくる。これは死に様を探し続けた者が生き方を見つけようとした者を救うための物語。つつましく生きたいのになぜか人生の節目で裏切られ、真っ当な人生を進むことを否定される人々を書く物語は志水辰夫の作風をどこか思わせた。2011/10/19
ひまわり
9
伊勢の人生は…切なくて悲しい。2014/01/05
有坂汀
7
作家、白川道先生によるハードボイルド小説の第二作です。僕がこの作品を読んだのは一連の白川道文学を読んだ後でした。読み終えてわかったことは『天国への階段』や『最も遠い銀河』(幻冬舎文庫)や『終着駅』(新潮文庫)などといった一連の作品群はこの作品を踏襲しているなと思いました。デビュー作の『流星たちの宴』に続く第二作だったのですが、先述した通りのプロセスを経ているので本書を読んだ後には「あぁ、そっか。」と思えましたが、読んで決して損はしないので『ハードボイルド・男の美学』に酔いたいときには最適かと思っています。2025/04/13